世界銀行はインフラや建物の3分の1が物理的被害を受けたと分析し、復興費用を2160億ドル(約33兆円)と見積もる。反体制派を率いて暫定大統領となったアフマド・シャラアは、復興のカギを握る経済制裁の解除と支援を求めて、孤立していた外交関係の立て直しを急いできた。
反体制派の後ろ盾だったトルコとの関係強化に加え、サウジアラビアやカタールなど湾岸諸国から財政支援を取り付け、トランプ米大統領ら欧米首脳とも会談を重ねて制裁解除の約束を引き出した。内戦中に反体制派を空爆したロシアとも関係再構築に動いている。
しかし、その効果はまだ市民の目に見える形にはなっていない。
ウクライナやガザなど相次ぐ戦争に疲弊し、自国優先志向を強める欧米諸国の支援は鈍く、国連人道問題調整事務所(OCHA)が呼びかけた緊急人道支援は要請額の3割も集まっていない。国際送金のハードルはなお高く、シリアと取引した外国企業に制裁を科す米国の「シーザー・シリア市民保護法」(シーザー法)の廃止は25年12月末までずれ込んだ。
内戦中は国際機関経由の支援にとどめてきた日本政府は、二国間の政府開発援助(ODA)を約15年ぶりに再開することを決めたばかり。目の前にある喫緊の復興需要と、徐々に動き出した国際支援が現場に届くまでの「時間差」に直面している。
そんな中、資金を待つのではなく自らの手で集めようと、地元行政や有志による寄付金集めのイベントが各地で活況を呈している。
故郷の復興に力を貸す
在外同胞からの寄付
反体制派の拠点だった北西部イドリブ県ビニーシャ。倒壊した建物が目立つ町の夜空を11月末、大口寄付を祝う花火が何度も彩った。
会場の大型スクリーンに破壊された学校が映し出され、「再建に50万ドル(約7800万円)」とテロップがついた。内戦で父を失った少女が登壇して「私は20ドルを寄付します!」と宣言すると、司会者がすかさず「誰か助けてあげる人はいませんか?」と呼びかける。競うように手が挙がり、5000ドルの寄付が集まった。総額はスクリーン上で刻々と更新され、大口寄付に花火と歓声で盛り上がる様子が動画で配信されていく。この夜だけで400万ドル以上が集まった。
主催者の一人、画家のアジズ・アスマール(53歳)によると、国外で暮らす町出身者は人口の1割にあたる約6000人。寄付の半分は在外の同胞から寄せられると言い、「故郷に貢献したい人たちと一緒に復興を進めたい」と話す。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレ(DW)が各種報道を集計したところ、シリア各地の寄付キャンペーンで総額5億ドル近くが集まった計算になるという。
