2026年2月22日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2026年2月22日

日本を出る

王国への道 –山田長政–
遠藤周作
新潮文庫
737円(税込)

王国への道 –山田長政– 遠藤周作 新潮文庫 737円(税込)

 関ヶ原の戦い以降、戦国の世が終わり、泰平の世がやってきた。しかしそれは、才覚と力量で成り上がろうとした藤蔵(山田長政)や、追放令が出されたキリシタンの冒険家・ペドロ岐部にとって、自分の居場所が日本からなくなったことを意味した。長政のシャム(タイ)のアユタヤ王朝における立身出世の物語を主軸にしつつ、マカオから、バグダッド、エルサレムを経てローマへと渡り、司祭となった岐部の軌跡が交差して描かれる。2人の最期は大円団とはいえないが、400年以上も前に、日本を飛び出して活躍の場を世界に求めた日本人がいたことに勇気づけられる。

日本開国の舞台裏

新装版 海の祭礼
吉村 昭
文春文庫
1012円(税込)

新装版 海の祭礼 吉村 昭 文春文庫 1012円(税込)

 1853年、ペリー率いる米海軍の黒船が浦賀にやってきて開港や通商を求めた。これにより、鎖国が終わり、明治維新につながっていくというのがざっくりとした歴史認識だ。しかし、この交渉のやりとりを誰がするのか? 通詞(通訳)だ。ネイティブアメリカンを母に持つラナルド・マクドナルドは日本に行くことを志し、1848年、捕鯨船を降りて利尻島に上陸する。その後、長崎で通詞・森山栄之助に英語を教える。そして、この森山がペリーとの交渉で通訳に立つのだ。

自由を求めて獲得した知恵

民主主義
文部省 角川ソフィア文庫 1012円(税込)

民主主義 文部省 角川ソフィア文庫 1012円(税込)

 日本国憲法施行後に中高生向け教科書として当時の文部省から発刊された。軍国主義で多くの犠牲を生んだ敗戦の記憶が、皆の心に刻まれていた時代だからこそ、民主主義がいかに尊いものかを丁寧に解説する。民主主義は単なる「政治の手段」ではなく、「人間を尊重すること」であり「それを実現させようとする人々の態度」なのだという。この本質は国や時代が違っても変わらない。自分は今、「人任せではない姿勢」で国や他者と向き合えているだろうかと考えさせられる。

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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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