2026年2月24日(火)

Wedge OPINION

2026年2月24日

 抜けているのは「地方をどう維持するのか」という視点である。人口流出や過疎化、地域産業の衰退といった課題に、主体性をもって政治に働きかける中心は、地方を選挙区とする議員の役割になる。単に衰退しているから代表を減らすという発想からは、将来へのビジョンを感じることができない。

 議員の世襲化に対する批判も、削減論にはみられる。だが定数の削減は、かえって世襲化を促すことになる。

 日本は政治における参入障壁が高く、国際的にみても異例に高い供託金制度や、落選時のリスクが大きいことから、議員やその家族、秘書出身者などの一定の政治経験や支援を期待できる候補者に偏りがちである。世襲化は新規参入が困難なために生じている面もあり、当選をより厳しくする定数削減は、むしろ議員の多様化や世代交代を抑えることにつながるだろう。

従来の議論から脱却し
議員を「強くする」改革を

 議員歳費の問題も、削減論と密接にかかわる。全衆院議員の関係経費は年間約205億円(25年度)で、うち歳費が約102億、調査研究広報滞在費が約56億である。

 議員一人あたりの金額(約1700万円)は国際比較上も高く、経費削減をメリットとして強調する議論も多い。

 だが、日本は定額給付方式をとっており、他国では経費になる部分も給与とみなされるなど、比較には注意が必要である。しかも事務所費や人件費など、議員一人の年間平均支出は約2000万~3000万円にのぼっており、国庫支給額は必要経費を補えていない。

 もし議員数をそのままに歳費を減らしても、政治活動は低調になり、一部の議員は選挙区の有権者よりも大口の献金者の代理人となるだろう。むしろ必要な経費に関しては支出を積極的に増やし、かわりに経費の使途開示を強化して、政治資金を透明化するくらいの発想も必要ではないか。年間200億円は年間予算(約120兆円)の0.0167%であり、仮に倍額になろうと影響は限定的である。

 民主主義にはコストがかかる。だからこそ、議員を「削る」ことよりも「強くする」ことこそが、本来の政治改革として考えられてもよいはずだ。しかし、政治不信の根強い現在の日本では、その実現は難しい。最大の問題点はここにある。

 議員定数削減の議論は平成期の「政治とカネ」問題から波及し、政治家の「身を切る」改革は国民へのさらなる負担増の布石として用いられてきた。

 類型化された議論からそろそろ脱却し、政治の信頼を取り戻すための具体策を整える段階にあるのではないだろうか。

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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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