異なる西側と中国のロジック
黎氏の判決について、国際社会は強く批判。米国のルビオ国務長官は「不当かつ悲劇的な結末」だと主張し、国際NPOのジャーナリスト保護委員会は「香港では法の支配が完全に崩壊している。実にひどいこの判決は香港の報道の自由にとって最後のとどめとなるだろう」と指摘した。
一方、中国国内は、妥当な判決と考える人が多い。さらに「これで香港は安定し、19年のような大規模なデモはもう起きないだろう」という意見もあった。
日本や欧米からみると、この判決に違和感があるが、中国は異なるロジックで物事を進めていることを知る必要があるだろう。西洋であれは、司法は独立しており、裁判所は政治的な案件でも政府に不利な判決を下すことができる。日本でも「国が敗訴」という事例は枚挙がない。
香港は、英国のコモン・ローの法体系を採用しているが、国安法は特別な位置づけとなっている。国安法第62条に「香港特別行政区当地の法律規定と本法(=国安法)が一致しないときには、本法を適用する」と書かれている。つまり、国安法が香港の法律より優先されるのだ。
その上で、中国と香港側の考え方は、国家安全法は正当な法律であり、法律に基づき、裁判所が手続きを踏み、判決を出す。よって、法の支配があり、司法は独立しているというロジックとなる。ただし、同法は香港立法会(議会)での審議を経ず、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が制定するという例外的な形が取られた。どんな(主旨の)法律かの運用ではなく、法律の文章に書かれてある通りに判断したかどうかを見るのだ。
黎氏の場合なら、国家安全を脅かす行為を、法律に基づき、裁判で違法と判断したので、法の支配が機能している……ということになる。そう、自由のため、円滑に社会が回るための法治というよりは、国家を守るための法治が基本となる。また、外圧に屈せず、法律通りに判断したのだから司法の独立が成り立っているという考え方だ。
この考え方について、中国政府の幹部はプロパガンダでやっているのではなく、実際に信じているというのがポイントだ。彼らは嘘をついているつもりもないだろう。中国国民も大勢が支持しているが、検閲があることは頭の片隅に入れたほうがいい 。
つまり、中国側と西側の論点が、かみ合うことはほぼ永遠になく、中国自体も西側に納得してもらえるとは思っていない。この状況はトランプ風に言えば「もう1つの真実」ということになる。
ある香港人は声を潜めながら「厳しい量刑は予想通りですが、有罪という事実に司法の変質を感じますね……」と語る。
