三権分立から行政主導に変わった香港
国安法制定後の20年9月、当時の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が「香港に三権分立はない」と発言し香港市民が驚いた。中国政府は、ここ十数年、香港を中国と同じように行政主導の街に変えようとしてきたが、19年の大規模デモを受けて香港政府を100%信じきれなくなっている。林鄭氏の発言は、行政、立法、司法の三機関は互いに協力するものの、中国政府の意向を受けて施政を行う行政長官が司法、立法権に優越するとの考えを示したものだ。
国務院香港マカオ事務弁公室の夏寶龍主任は、1月に北京で開かれたセミナーで「香港やマカオの行政主導を堅持し、立法と司法は足を引っ張ってはならない。行政主導には、統括強化と強力な執行という優位性があり、国家の主権、安全、利益を効果的に守っている」と、行政主導でいく考えを改めて表明している。
最近、香港では、路線バス乗車時にシートベルト着用を義務とする法律が施行されたが、着用者のシートベルトが外れない問題が発生するなど、運用に不具合が生じたことから、香港政府は「違法行為として法執行しない」と事実上、法律を撤回した。
本来、法律の運用を停止させるならば、手続き上は立法会を通さないといけないが、その手続きは、後日行われることになっている。つまり、立法会は、香港政府が作った法律案の追認機関のようになってきた。もはや、司法も立法府も行政の下にある状態だ。
香港の教科書には、「三権分立」の言葉が20年から削除されており、あと10年もすれば、三権分立を学ばなかった子どもたちが香港社会にでる。その時は、司法を軽視する風潮が高まっても不思議ではない。
