しかもこの店の中華、「近頃、僕ら夫婦は、油っこい料理がダメで」という理由で、驚くほど油っけが少ない。
調理長の前田（まえたと濁らない）克紀さんと、店長で点心やスイーツの得意な前田藍さん。
その多様なレシピは、どんなものを土台にしているのか。
「たとえば、1980年代に出版された本で、文革を終えた後の毛沢東が号令をかけて編纂させた『中国菜譜』というレシピ集があるんです。面白いですよね、古いものは仏像も寺もみんな否定したのに料理だけは残した。それと、これに乗じて主婦の友社が作った『中国名菜集錦』という本。今は、この2つを叩き台にしています」
物静かで謙虚な人だが、なかなかの革新派とお見受けした。探求心旺盛で、学究肌の調理長は現在37才。時折、前田さんが尖り過ぎた料理に走りそうな時は、点心だけでなく、中華スイーツも得意な藍さんが“その料理、どうなの？”とぐっと手綱を引く。
そんな二人の養生中華、これからも楽しみである。
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