漁業が成長している国では、
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(1)研究者がABC(生物学的許容漁獲量)を設定する
(2)ABCに基づきTAC(漁獲可能量)を設定する
(3)TACを漁業者や漁船ごとに割り当てるIQ(個別割当)を導入する
(4)漁業者や漁船に割り当てられた権利を譲渡、貸付できるITQ(譲渡性個別割当)を導入する
ということが一般的となっている。これを日本の現状に照らし合わせると、様々な問題が浮かび上がってくる。
(1)ABC(生物学的許容漁獲量)
ABCの設定は、水産庁の外郭団体である水産総合研究センターが行っている。「運営資金が紐付きであり、言いたいことが言えない組織のため、ABCの意思決定を水産庁から切り離す必要がある」(水産総合研究センターOB)という指摘もある。
(2)TAC(漁獲可能量)
TACはABCをもとに決められるべきであるが、漁業者への配慮により、ABCを超えるTACが設定される例も目立つ。TACを決定する水産政策審議会の委員に「漁協などの漁業関係者が多くいるため、ABCが軽視されがちになる」(関係者)ことが要因の一つである。
例えば、14年のスケトウダラ日本海北部系群は、ABC6500トンに対して1万3000トンのTACが設定されている。資源水準は低位で減少傾向にある魚種である。水産庁「資源管理のあり方検討会」では、今後、このTACをABCに近づけ、漁業者の窮状緩和措置等を総合的に検討すると発表しているが、そもそも過剰なTAC枠削減のために、補助金をつぎ込む政策に、納得感は抱きづらい。
漁獲量がTACに達しないケースも多く、設定が甘すぎるとの指摘も多い。TACを決定する水産政策審議会のあり方を見直すべきである。
TAC対象魚種も少ない。日本では7魚種を対象としているが、数百種を対象としている国もある。