2026年4月28日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月28日

 この危機は、過去の首脳外交で実現できなかった真の域内経済統合実現の条件を作り出している。基本的商業活動が唯一のチョークポイントに頼るのを止めれば、地域経済と世界的サプライチェーンのリスク軽減に繋がる。

 地域が目指す方向性は明確で、後戻りはない。現在の危機がどのように終わろうが、予測不能な隣国がコントロールする狭小な海峡に戦略的に依存する状況に戻る国はいない。

 パイプラインは拡充され、港湾能力は創造される。送電網、水供給システム、地域経済を連結する貿易回廊は公的になる。世界は、何が壊されているかではなく、何が構築されているかに注目すべきだ。

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石油パイプラインの能力強化

 日本の石油対中東依存度は、73年の第一次石油ショック時点でさえ77.5%であり、その後、供給先多角化の努力もあり95年には68.8%まで低下したが、その後、代替供給先の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の生産量低減もあり、結局、安価で豊富な湾岸への回帰が漫然と継続したことから、現時点では95%を超えている。これは官民を通じた危機感の欠如と不作為の失敗と言わざるを得ない。

 上記の論説の著者Badr Jafarは、UAEのビジネス・フィランソロフィー担当特使だが、「イラン戦争が何を壊しているかではなく、何を作り出しているかに注目すべきだ」という彼の指摘は正鵠を得ている。今回のイラン戦争に際しては、日本は、本来、イランと維持してきた良好な関係を最大限活用して、米イラン停戦と、アジア太平洋地域にも影響があり得る核拡散禁止条約体制崩壊を防ぎ、中東内の核拡散防止の枠組構築を主導すべきだったが、時既に遅い。少なくとも、今回の事態を奇貨として、将来に向けた日本の脆弱性を下げるためのシステム構築に早急に注力すべきだろう。

 まず、中東からの石油にある程度依存せざるを得ない現実に正面から向き合い、ホルムズ海峡という隘路から来る制約を低減するための措置。まず考えられるのは、石油生産が集中する湾岸地域から他の場所に石油を輸送するパイプラインの能力強化である。

 既存のもので有名なのは、サウジアラビアの東西パイプライン。湾岸のアブカイクから紅海側のヤンブーに石油を運ぶパイプラインで、能力は日量500万~700万バレル(B/D)。最近はほとんどフル稼働だ。

 ただ、ヤンブー港の積み出し能力は500万B/Dしかない。日本のサウジからの石油輸入は日本の全石油輸入の40%強で最大だが、日量は100万B/Dを少し超える程度。ただし、ホルムズ海峡を通過して輸送される石油は全体では2000万B/Dなので、東西パイプラインの能力では全く不十分。また、ホルムズ海峡経由の石油輸出を全て紅海経由にするのは相当無理がある。

 なぜなら、アラビア湾にホルムズ海峡があるように、紅海にはバブ・エル・マンデブ海峡という隘路(最大でも32kmの幅)があり、近年のイエメンのフーシ派の行動を見ても、本質的問題は同じだからだ。ちなみに、既に世界の貿易輸送量の約12%はバブ・エル・マンデブ海峡経由だ。


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