街の小さな菓子店のパティシエをしている、早瀬陸(はやせ・りく、松山ケンイチ)は失踪していた妻の夏海(なつみ、山口沙也加)が山中で白骨死体となって発見されたことから、殺人容疑で警察に追われる。
ゴーシックスコーポレーションの会計を担当している、幸後一香(こうご・いちか、戸田恵梨香)が早瀬の前に現われる。そして、早瀬に警視庁捜査一課の警部補・儀堂歩(ぎどう・あゆむ、鈴木亮平)に“リブート”するように勧める。
一香は、早瀬の妻の夏海の後任だという。ゴーシックスコーポレーションを率いる合六亘(ごうろく・わたる、北村有起哉)は、表向きはホテルや飲食店を傘下に持つ経営者であるが、裏の顔は違法賭博やオレオレ詐欺などのカネをマネーロンダリングしている。
悪と善が毎回入れ替わる
早瀬が“リブート”したわけは、妻の夏海の殺人にかかわった人物を探索しようという狙いがあった。警部補・儀堂は、合六が警察内部の情報を流させるひとりだった。儀堂として警察に舞い戻った早瀬は、儀堂とゴーシックスコーポレーションとの関係を調査している、監察官・警視正の真北正親(まきた・まさちか、伊藤英明)の追究に遭う。
“リブート”は、早瀬(松山ケンイチ)のみならず、ドラマの登場人物たちにも施されてついに、彼らのハッピーエンドの再起動につながる。「ドラマはこうでなきゃ」と胸をなでおろす。
悪が悪とは限らず、善が善とは限らない。悪から善に、善から悪に、登場人物たちのスピード感あふれる転換が繰り返される。全10回のドラマは、観る者を毎回驚かせる。
黒岩勉の本ドラマは、末永く語り継がれる名作のひとつである。
『HOMELAND(ホームランド)』(Netflix、Amazonプライム、Disney+、Huluほか配信)
精神疾患をかかえながら諜報活動をする米中央情報局(CIA)のエージェント、キャリー・マティソンの物語である。イランが核開発を中止する宣言をした時代、その裏でうごめく同国やイスラエル、ロシア、アメリカの諜報機関の戦いを描いている。
1seasonは12話の構成。season8まである。筆者は、観始めてから2カ月余りでようやくseason7の途中までたどり着いたところである。つまり、読者のみなさまと同じようにキャリーの最後がどうなるのか、わかっていない。
諜報活動に「善」も「悪」もない。諜報機関は政府の規制の中では、自らの国を守るためにどんな手段もとって恥じることはない。
物語が描いているキーワードは「ダブル・エージェント」つまり自らの国を守る情報を得るために、敵対国の内部に潜り込む二重スパイである。そのためには、敵国にわずかな自国の情報の漏洩もいとわない。
ドラマには、ドイツの情報部門の女性幹部が実はロシアのダブル・エージェントだったり、ロシアの諜報部員がアメリカに寝返ったが、実はその裏でロシアにつながっていたり。ドラマは二転三転する魅力に富んでいる。
