2026年4月5日(日)

WEDGE REPORT

2026年4月5日

 2025年10月に発効したガザ地区の停戦合意から半年が経つなか、ドナルド・トランプ米大統領が主導するガザ和平計画は重大な岐路に立たされている。米国とイスラエルが続ける対イラン軍事作戦は、国際社会の関心をガザから引き離し、和平プロセスの進展に深刻な遅延をもたらしている。

5段階の武装解除工程と「一つの武器」原則

 ロイター通信などによると、ガザの暫定統治を監督する国際機関「平和評議会」は、3月中旬にパレスチナのイスラム組織ハマスや、その他の武装派閥の完全な武装解除を求める詳細な計画を提示したとされる。

 カイロでハマスに提示されたとされる提案は、8カ月間のタイムラインに沿って段階的に武器を引き渡すプロセスを想定している。イスラエルは長年、ハマスは一度にすべて武装解除すべきだと主張してきたが、米国の圧力の下で段階的なアプローチに合意したとされる。提示された計画は、以下の5段階で構成されている。

  • 第1段階(1〜15日目):パレスチナ人主体の技術官僚機構「ガザ行政国家委員会(NCAG)」が治安と行政の権限を掌握し、武器回収の準備を開始する。
  • 第2段階(16〜40日目):イスラエルが管理地域から重砲や戦車などのすべての重火器を撤去し、国際治安部隊が展開される。
  • 第3段階(30〜90日目):最も集中的な段階とされ、ハマスがすべての重火器や軍事装備品をNCAGに引き渡し、すべてのトンネル、爆発物、軍事インフラの破壊を容認する。
  • 第4段階(91〜250日目):NCAGの警察部隊が銃やライフルなど残るすべての兵器を回収し登録する作業と並行して、イスラエル軍が段階的な撤退を開始する。
  • 第5段階:非武装化の「最終確認」が行われ、境界線周辺を除くイスラエル軍のガザ完全撤退と包括的な復興作業が開始される。

 この提案文書には「ガザは、一つの権威、一つの法、一つの武器という原則の下で統治される。これにより、NCAGによって許可された個人だけが武器を所持でき、すべての武装派閥は軍事活動を停止する」と明確に記されている。元国連中東特使で、「平和評議会」の実務責任者を務めるニコライ・ムラデノフ氏は、例外を認めない完全な武装解除を求めている。

2026年4月2日、2年間にわたるイスラエル軍の攻撃で破壊された家の中で、ガザ地区南部のハンユニスで風の強い日に子どもが座っている( REUTERS/Haseeb Alwazeer/aflo)

 新たな治安維持を担うパレスチナ警察部隊については、過去にハマスの公務員だったパレスチナ人も、10月7日の攻撃に関与していないか、イスラエルによる審査を経た上で応募が認められる可能性がある。アラブ系メディア、アッシャルク・アルアウサト紙がエジプト情報筋の話として報じたところによると、エジプト内務省が新部隊の候補者数千名の受け入れを予定しており、新兵は6週間の訓練を受け、他の者はヨルダンで訓練を受けることになっているという。

恩赦とインセンティブ、残る資金確保の不確実性

 この武装解除プロセスにおいては、恩赦とガザへの重点的な投資がハマスへのインセンティブとして提供されているとされる。個人の武器を引き渡すことに同意した武装グループのメンバーには、買い取りプログラムを通じた仕事や資金の提供が検討されている。しかし、平和委員会にそれを支払うための資金が実際にあるかどうかは不明だ。トランプ大統領は2月に湾岸諸国などから約70億ドルの資金拠出の約束を取り付けていたものの、約束された資金のうち実際に提供されたのはわずかな額にとどまっているとみられている。

 また、ガザの治安維持と武装解除プロセスを担保する予定の多国籍部隊「国際安定化部隊(ISF)」の編成も暗礁に乗り上げている。インドネシアのプラボウォ大統領は先月16日、「国際安定化部隊」への軍の派遣を「延期する」と明らかにした。中東情勢の緊迫化が背景にあるとみられ、活動開始は極めて流動的となっている。

同盟国間の極めて困難なバランス調整 ハマス内部でも分裂か

 さらに、中東での長引く混乱は、ハマスにとっても同盟国間での極めて困難なバランス調整を強いる結果となっている。ハマスは、イラン政府が中東で育成してきた民兵ネットワーク、いわゆるイランの「抵抗の枢軸」の一翼を担っている一方で、カタールとも強い結びつきがある。カタールは何年もの間ハマスの幹部を受け入れ、貧困家庭やインフラプロジェクト、公務員の給与のために数億ドルをガザに提供してきたとされる。

 イスラエルによる空爆でイランの最高指導者ハメネイ師が殺害された際、ハマスは哀悼の意と後継者への支援継続を求める書簡を送ったが、イランがカタールへ向けてミサイルやドローンを発射した際には2週間にわたり沈黙を保った。その後、カタールを名指しせずに地域諸国への攻撃停止をイランに求める声明を出したが、これはハマス内部におけるイラン寄り派とアラブ諸国寄り派の分裂を反映しているとも指摘されている。

 ハマスは仲裁国との間に相違があることを認めている。ハマスの交渉担当者は重火器を引き渡す意向は示しているものの、自衛やガザ内で敵対する民兵組織からの防衛を理由に、個人用の武器の保持を強く主張している。ハマス内部からは、イスラエルから指名手配されている個人が、自衛のための武器なしではイスラエルの特殊部隊による暗殺を防ぐことができないと懸念を示す声も出ている。

 また、武装解除とガザ再建を直接関連付けることに対しても強い反発がある。ハマス幹部のバセム・ナイム氏は、「平和評議会」の実務責任者であるムラデノフ氏のアプローチを、真の保証を提示することなくイスラエルの意向に沿ってプロセスを作り直そうとしているとして激しく非難しており、交渉は暗雲が立ち込めている。


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