2026年5月3日(日)

教養としての中東情勢

2026年5月3日

 対してサウジの事実上の支配者ムハンマド皇太子は生産調整をして高価格を維持、次世紀まで資源を枯渇させないという方針。自らの国家改造計画「ビジョン2030」を成功させるためにもOPECの締め付けを強化して機構内の結束を図っていくハラだった。

 この2国間対立とUAEの不満につけ入ったのがイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領だ。ベイルート筋によると、トランプ氏はかねてより米国内のガソリン価格に影響を与えるOPECを強く非難し、解体を要求してきたが、戦争でイランの標的になっているUAEに「防衛強化」と「OPEC脱退」の交換取引を持ち掛けた。

 「アブラハム合意」でUAEと国交を樹立したイスラエルはミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」を提供したという。イスラエルにとってペルシャ湾を挟んだUAEに前線基地ができるのは願ったりかなったりだ。

 実際に「アイアン・ドーム」が機能したかは明らかではない。「脱退を仕掛けた黒幕はトランプとネタニヤフではないか」(ベイルート筋)。

 UAEは対イラン強硬派。トランプ政権に対し、イランへの徹底攻撃を進言しており、サウジなどペルシャ湾岸協力会議(GCC)の中では突出している。このためイランから数千発のミサイルやドローンの攻撃を受け、石油関連施設など約50カ所が損害を受けた。エネルギー資源の要衝であるホルムズ海峡の封鎖により、石油輸出は日量190万バレルまで減少した。

サウジとの確執の歴史

 パキスタンがイラン戦争の終戦に向けて調停に躍起になっているのは舞台裏でサウジのムハンマド皇太子が要求しているためだ。両国は昨年「戦略的相互防衛協定」を結んだが、その背景としては核保有国であるパキスタンからいざというときに核爆弾製造技術を提供してもらうことにある。

 パキスタンがUAEに支払わなければならない30億ドルのローンをサウジが肩代わりしたという報道もある。サウジとパキスタンは「金」と「軍事力」のバーターという補完関係にあるとも言えるが、UAEはパキスタンのイラン戦争の調停を妨害したいと考えているようだ。

 サウジが軍事的関係をパキスタンと強めるのも、UAEがイスラエルの「アイアン・ドーム」を導入したのも「米国だけでは自国を守れない」という前提が一段と明確になっているからだ。UAEは今回、OPEC脱退という「贈り物」をトランプ大統領に届けたが、脱退の決断が正解だったのかはまだ分からない。

 いずれにせよ脱退はサウジとの対立が限界にまで高まった象徴だ。UAEがOPECに加盟したのは首長国連邦として国が統合される前の1967年。サウジを兄貴分として敬い、関係は親密だった。ムハンマド大統領が皇太子時代はサウジのムハンマド皇太子とともにトランプ大統領と面会したこともある。


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