読売新聞は18日の日の社説で、「ベネッセ流出 逮捕を情報管理徹底の契機に」と見出しを取り、容疑者の逮捕を受けて再発防止に向けた警鐘をならしたほか、企業側の管理責任や、名簿業者の規制強化を求めた。毎日新聞も27日の社説で、「名簿業者 実態把握と監視が必要」との見出しで、名簿業者の実態把握に政府が努める必要性を指摘した。
ベネッセの問題を巡っては、便乗した不審な電話が消費者のもとにかかってくるという二次被害めいた動きも出ている。個人の情報漏洩の可能性を語りながら、逆に個人情報を聞き出そうという不心得者の悪質な動きだ。
原田氏の対応への批判も
さらにここにきてメディアが指摘し始めているのが、記者会見を行うなどこの問題の矢面に立っている原田泳幸会長の経営手腕だ。原田氏は「プロ経営者」としてこの夏、日本マクドナルドからベネッセに転じたはずだったが、朝日新聞は7月23日の朝刊で「経営のプロ 姿見せず 原田氏、対応後手に」との原田氏の対応の稚拙さを批判した。
「当初金銭的謝罪は考えていない」としながら、その後「200億円の原資を準備し、お客様に謝罪する」と一転して、態度を変化させたことなどはその典型だ。流出件数についての説明も、最初は「最大で約2070万件まで増える可能性あり」としていながら、その後、約2300万件となり、さらに増える可能性についても言及している。仮に今後クレジットカードの番号などのいわゆる「センシティブ情報」などが含まれていたことが明らかになった場合、経営に与えるダメージは一段と大きくなるだろう。
産経新聞は26日のウェブ版で「影を潜める“原田マジック” ベネッセが迎え入れた救世主、らしからぬ迷走ぶり」として、もともと原田氏はマクドナルド時代にはリスク管理に敏感で、ある店舗が誤って消費税を1万円ほど余分に取ったことに対して数千万円ものコストをかけて謝罪広告を打ったエピソードを引き合いに出し、これと比べて今回の対応は原田氏らしからぬと違和感を示した。
子供の情報を中心とした大量の情報流出、個人情報保護が厳しくなる中での水面下での企業の名簿獲得競争、事件に便乗した不届き者の電話、プロ経営者の資質など、現代の経済社会の抱える問題が集約されたかのように見えるベネッセ問題。メディアを含めた情報を扱うすべての企業や個人情報を扱う行政機関など社会全体に重い課題を投げかけた。ここでしっかりした対応をとらなければ、日本経済の将来に禍根を残すことになる。企業も行政も今後も出てくるであろう様々な論点に真摯に向き合い、真摯な対応を取ることが求められていると思う。
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