2026年7月16日(木)

トランプ2.0

2026年7月16日

「ソフト・パワー」に背を向け「ハード・パワー」に依存

 米国の総合力の重要性については、かつて、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、軍事力および経済力を軸とした「ハード・パワー」との対比で、米国が移民を中心とする外国人を引き寄せるさまざまな“魅力”などに言及した「ソフト・パワー」論を展開して以来、内外で注目されてきた。

 ナイ教授は「ソフト・パワー」の意義について要旨、次のように論じている:

 「他国(民)が米国に同調または協力して行動を起こす前提として、二つの要因があげられる。一つは、金銭的取引および軍事力をテコとした半ば強制による力(ハード・パワー)であり、もう一つは、強制によらず、魅力、憧れ、尊敬、政策などを通じて自由意志で引き寄せられる力(ソフト・パワー)だ」

 「ソフト・パワーの源泉は①映画、音楽、スポーツ、飲食などの日常的行動からなる文化②民主主義、人権、市場開放などに反映される米国内外での統治スタイル③道徳性、協力精神に裏付けられた信頼性のある外交政策――などからなる」

 「ソフト・パワーによる外交は、ハード・パワーに依拠した外交に比べ、安上がりで、実効性があり、持続性があるのに対し、ハード・パワーは行使する際に多大なコストがともなうだけでなく、効力にも限界がある」

 「世界各国との健全な関係を維持していくためには、ハード・パワーのみでは不可能であり、一方、ソフト・パワーだけで事足りるものでもない。両者をバランスよく組み合わせたスマート・パワーの確立が最もふさわしい在り方といえる」

 ところが、トランプ2次政権では、「ソフト・パワー」には背を向け、とくに軍事力を背景とする「ハード・パワー」への過度の依存が目立っている。

 昨年9月、トランプ大統領の個人的意向を受け、「国防総省(Department of Defense)」が「戦争省(Department of War)」に改変されたことは、その象徴といえよう。同省のプレス・リースは、今回の呼称改変の狙いについて「活動を国家利益に集中させ、利益確保を目的とした戦争遂行への十分な態勢を米国の敵国に十分知らしめるため」と説明している。

 そして、「戦争省」下での27会計年度国防予算も、1兆5000億ドル(約240兆円)と、途方もない規模に膨れ上がった。日本の防衛予算の25倍、日本の国家予算のざっと2倍に相当する。

 筆者が3度目の特派員としてワシントンに常駐した96年当時、米国の国防予算が3330億ドル($333 billion)に達したことが「史上空前規模」として大きな話題となったが、その後わずか30年の間に、4倍以上に急増したことになる。

 トランプ大統領が、この国防予算の中で特に重視しているとされるプログラムの中には①“ゴールデン艦隊”と呼ばれる新型戦艦18隻および付随艦16隻の建造費658億ドル②”ゴールデン・ドーム“と呼ばれる多層ミサイル防衛システム建造費180億ドル③長期化した対イラン戦争により備蓄不足が露呈した空対地ミサイル、対空ミサイル、砲弾など弾薬類の緊急調達費530億ドル④宇宙軍関連の大幅装備拡充費710万ドルなどが含まれている。


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