冷凍食品を「レジリエンス資産」として考える
バッファ在庫を持つ上で最大の障害の一つは、保存性である。在庫を積み増せば、廃棄が増える可能性がある。その点で、冷凍食品は重要な意味を持つ。
長期保存が可能な冷凍食品は、食品ロスを抑えながらバッファを持つことができる「レジリエンス食材」となり得るからである。家庭のローリングストックから業務用の戦略在庫まで、冷凍食品は供給途絶に対する社会的な緩衝材となる可能性を持っている。
皮肉なことに、今回の障害では、その冷凍食品を含む供給網自体が停止した。しかし、これは冷凍食品というカテゴリーの欠陥を意味するものではない。むしろ、保存可能な商品であるにもかかわらず、サプライチェーン全体で在庫を極小化してきたことの問題である。
冷凍食品産業にとって今回の事例は、自らの商品特性を単なる「効率化の道具」としてではなく、「社会のレジリエンスを支える資産」として位置づけ直す契機となり得る。
サイバー攻撃を前提にした社会設計へ
食品衛生の分野では、危害の発生を完全にゼロにすることは困難であるとの前提に立ち、発生を予防するとともに、発生した場合の被害を最小化する考え方が定着している。サイバー攻撃についても、同様の発想が必要である。
すなわち、「侵入されないこと」だけを目標にするのではなく、「侵入される可能性がある」ことを前提に、被害を最小化し、早期に復旧し、顧客や社会への波及を抑える設計へ移行する必要がある。
さらに重要なのは、一社のシステム停止をその企業だけの問題として扱わないことである。ニチレイのように、多数の企業が依存する物流事業者が停止すれば、被害は瞬時にサプライチェーン全体へ波及する。したがって、必要なのは個々の企業のサイバーセキュリティー対策だけではない。
複数の物流事業者への分散、戦略的な在庫の確保、代替ルートの整備、業界横断の情報共有、そして有事の優先供給体制まで含めた、社会全体のレジリエンス設計である。
アサヒの事例は、一企業のシステムが長期間停止した場合の被害の深さを示した。ニチレイの事例は、一企業のシステム停止が、他社の事業継続や消費者の生活にどれほど広く波及し得るかを示した。両者を比較すると、これからのサイバー危機管理に必要なのは、単に「侵入を防ぐ」ことではない。
「侵入されることを前提に、被害をどこまで小さくできるか」。そして、「一社の停止を、社会全体でどこまで吸収できるか」。この二つの問いに答えることである。
効率性を追求してきた食品サプライチェーンは、いま、効率性とレジリエンスのバランスを問い直す段階に入っている。
