「内地人」と「本島人」
台湾官吏の息子で台湾生まれだが「内地人」の生田琴司と、「本島人」の陳永豊。陳の実父は、反日闘争を行い、処刑されたが、少年期の陳はそれを知らない。1922年、2人は台湾の最エリート校である総督府高等学校尋常科(旧制中学)で出会い、互いに植物好きということで親交を深めていく。その後、琴司は台北帝大、陳は東京帝大に進むが、同じ帝大出でも、「内地人」と「本島人」では、その後の「格差」が明確になっていく。植民地時代の台湾の暗い側面を描き出すと共に、「学求」でつながる2人の友情の行方はどのような最後を迎えるのか。本書が2作目とは思えない大河小説だ。
国家とはなにか
街道をゆく40 台湾紀行 司馬遼太郎 朝日文庫 1078円(税込)
司馬遼太郎が台湾を旅したのは1993年。その頃はまだ、日本語を流暢に話すだけでなく精神までも「日本人よりも模範的な日本人だった」と語られる元日本人が数多くいた。司馬が当時の李登輝総統に会った際、「二十二歳まで日本人だった」と話しているのも印象的だ。今「元日本人」に会う機会を得るのは難しいが、本書を通して、生まれた国や時期が少しずれたことで運命が大きく変わってしまった彼らに触れると、まさに「国家とはなにか」を考えさせられる。
独りよがりの善意
台湾漫遊鉄道のふたり 楊 双子(著)、 三浦裕子(訳) 中央公論新社 2530円(税込)
台湾小説初の国際ブッカー賞を受賞。日本統治時代、「内地人」の小説家・千鶴子と「本島人」の通訳・千鶴が台湾を横断しながら、『滷肉飯』や『麻薏湯』などの食を歴史書さながらの解説とともに味わう──。一見あたたかい物語のように感じられるが、それだけでは終わらない。内地と本島、立場の異なる2人の関係性に表れてくる、その微妙な考え方の違いは、2人の関係性を成就させるのか。千鶴子の考え方は、自分自身にも当てはまるのではないかと内省させられた。
