2026年8月20日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年8月20日

ゼレンスキーが求めた4つのこと

 訪米後の情報をも合わせ総合すると、今回の訪米におけるゼレンスキーの主たる支援要請は以下の4点であったとみられる。

①パトリオットのライセンス生産「承認」を実務的プロセスに移行させること

② 冬までに緊急に必要となる「ミサイル300発パッケージ」の供与

③ロシア領内攻撃に使用するトマホーク巡航ミサイルの供与

④スターリンクのロシア領内での使用許可

 これらのうち①と②は「防衛」を、③と④は「攻撃」を主目的とする兵器等であるが、いずれも連日のように降り注ぐロシアのドローン、ミサイル攻撃からウクライナ国民を守るためのものだ。ただ、これに対する米側の反応は結局のところ、良くて「検討」、さもなければ事実上の「拒否」であったと、総括せざるを得ない。具体的には次の通りだ。

 ①について、トランプ側の反応は会談時においても曖昧さを残していた。ゼレンスキーは会談後に「パトリオットミサイル・システムのライセンス生産を認めることで合意した」と述べていたが、トランプ自身は「多くのことが話し合われた。会談は非常にうまく行った」などと投稿していただけだ。さらにゼレンスキー帰国後の7月31日には、「合意していない」と明言した。

 パトリオットを生産する米企業との関係についても、ゼレンスキーはレイセオン社、ロッキードマーチン社を訪問し協議したが、企業側との間で何らかの具体的プロセスに「合意」したか否かは確認できていない。

②の「ミサイル300発」についても、トランプの反応は「努力したいが、難しい」というもので、実質的には拒否と見るべきだろう。

③のトマホークについては、ウクライナの場合、海上発射型トマホークの発射プラットフォームを有していないので、2024年に実戦配備が始まったばかりの地上発射型「タイフォン」の供与ということになる(地上発射型は1987年の中距離核戦力〈INF〉全廃条約ですべて廃棄しており、19年に同条約が失効した後に開発を開始したもの)。タイフォンシステムから発射されるトマホーク・ブロック5は、射程1600キロメートル(km)以上、半数必中界(CEP)は数メートルと、ほとんどピンポイントに近い命中率を誇る。

 ところが、タイフォンは生産開始から間がなく数量的にも少ない上に、米国としては日本やフィリピンへの配備を優先するであろうから、実際早期にウクライナに供与することは難しいだろう(なお、ここに、日本とのトレードオフが存在する)。

④のスターリンクは、ウクライナが自身のドローンを使って、ロシア領内で精密攻撃を行うために必要となる。スターリンクは現在のところウクライナ領内(露占領地を含む)でしか使用できず、ロシア領での使用を禁じられているが、もしこれが可能となれば、ウクライナ軍は長距離ドローンをロシア領内奥深くまで、途中で通信を途絶えさせることなく飛行させ、ロシアの移動式ミサイル発射装置をリアルタイムかつピンポイントで攻撃することができる。


新着記事

»もっと見る