これはゼレンスキーとしては、「トマホークがダメならせめて自身のドローンで精密攻撃が可能にして欲しい」という訴えなのかも知れない。
しかしこれに対しても、報道では、トランプの反応は「検討する」以上のものではなかったようだ。
以上の通り、トランプ政権の対応は、少なくともパトリオットのライセンス生産については事実上、前言を翻し、その他の支援についても引き続き消極的であることが分かった。
欧州にも目を向ける
これに対し、ゼレンスキーはトランプ大統領や米国に対して「約束破り」等の直接的な非難や抗議は一切行わず、ウクライナ国内の深刻な防空ミサイル不足という「圧倒的な窮状」を世界に向けてひたすら訴え、政治的決断を懇願する方針に徹している。これは正しい対応だ。
同時にゼレンスキーは、米国だけに頼るのではなく、欧州北大西洋条約機構(NATO)有志国による取組みと歩調を合わせ欧州全体の枠組みの中で、長期的観点から防空体制を構築しようとしている。それはおよそ以下のような、3重の防空体制で構成されている。
① 最上層(大気圏外):「Bliksem EXO」(ブリクセム)
弾道ミサイルが大気圏に突入する前に迎撃することを想定した迎撃システム。7月13日の有志連合の会合でエアバス、MBDA、サフラン等の欧州企業が結成したコンソーシアムが開発に向けて意図表明している。
② 中高度(高度20~25km):FREYJA(フレイヤ)
上記有志連合会合で、連合の基幹プロジェクトとして合意された迎撃システム。ウクライナのFire Point社が開発した「FP-7.x」迎撃ミサイルを中核とする。
③ 下層(高度15~20km以下):既存のパトリオットおよび本年末頃に開始予定のドイツによる PAC-2 GEM-Tのライセンス生産等で対応。
以上の構想を実現するには、首尾よく行っても4~5年はかかるというのが多くの専門家の指摘するところだ。ただ、ウクライナとしては、この防空体制の構築を、ウクライナを欧州全体の安全保障の枠組みの主要な構成要素として位置付けるという戦略目標の一環として取り組んでいるのである。
