2026年9月2日(水)

食の「危険」情報の真実

2026年9月2日

日本では養殖トラフグで問題に

 食品へのホルムアルデヒドの使用は日本でも問題になったことがある。03年、熊本県などの養殖トラフグ場で、寄生虫(ハダムシ)を駆除するためにホルマリンを海水に混ぜて処理していたことが発覚した。当時すでに食品へのホルマリンの使用は全面的に禁止されており、出荷停止や自主回収、行政指導へと発展する大騒動となった。

 この時も、養殖トラフグにホルムアルデヒドが残留して健康被害を及ぼすリスクは極めて低く、トラフグ自体の安全性は保たれていた。とはいえ、法令遵守(コンプライアンス)の欠如は消費者を裏切る行為といえ、食の信頼を大きく揺るがす問題となった。

体内でも日常的に産生

 実は、ホルムアルデヒドは私たちの体内(血液や臓器など)に常に一定量存在している。体内のアミノ酸やDNAの代謝プロセス(1炭素代謝)の過程で、ホルムアルデヒドは日常的に産生されているのだ。

 人体には、このホルムアルデヒドを迅速に処理する高度な酵素ネットワーク(ホルムアルデヒド脱水素酵素など)が元々備わっている。体内で発生したホルムアルデヒドは、数分のうちに害のないギ酸へと代謝され、呼気や尿として排出される。つまり、人間の身体は微量のホルムアルデヒドを無毒化するシステムを生まれながらに持っているわけだ。

 日常生活の中でも私たちはホルムアルデヒドにさらされている。その最たる例がタバコの煙だ。タバコ1本の煙には数百マイクログラム単位のホルムアルデヒドが含まれており、喫煙者が1日に吸い込む量は微量に汚染された食品から摂取する量をはるかにしのぐ。

干しシイタケにもホルムアルデヒドは含まれている(karimitsu/gettyimages)

 とはいえ、前述したように自然界の食材にも天然のホルムアルデヒドは含まれる。干しシイタケや果実、魚介類などでは1キログラム当たり数ミリグラムから数十ミリグラム含まれ、WHOの飲料水基準を上回ることも珍しくない。

 毒性学の父と呼ばれるパラケルススは、「すべての物質は毒であり、毒でないものはない。用量こそが毒と薬を分ける」という言葉を残した。問題は「有毒な化学物質が存在するかどうか」ではなく、「人体に危険を及ぼす量なのか」だ。

 食材の水洗いや加熱といった一般的に行われている調理工程は、ホルムアルデヒドの低減にもつながる。また、言われ尽くされていることではあるが、リスクを下げるには「いろいろな食品を食べる」に尽きる。

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