「システムネス(Systemness)」という言葉がある。米国でも最大規模を誇る医療機関の一つ、クリーブランド・クリニックの経営でもよく使われる。
システムネスとは、様々な世界に拡がった個別の集団が、ばらばらに動くのではなく、横の連携も含めて統一された組織として機能することである。クリーブランド・クリニックでは、米国や英国、アラブ首長国連邦(UAE)にあるどの施設に行っても同様の医療サービスが受診できる。経営陣はどうすれば組織にシステムネスを構築できるのか常に意識して運営している。
今回、私の在米38年の経験から、日本で本来は構築されているべき〝英語でのシステムネス〟が欠落している問題について提起したい。
2025年度の外務省旅券統計などによると、日本人は現在、約18%しかパスポートを所有していない。米国の36%、英国の77%(ともに日本旅行業協会調べ)など、先進国に比べても保有率はかなり低い。
一方で日本は、歴史や文化が豊かなことや安全で食事もおいしいことが評判で、海外から多くの外国人が訪れている。このような訪日外国人とどのように交流すれば、日本にとって良いのかについて考える機会もたくさんあるだろう。この前提となるのは、共通言語である「英語でのコミュニケーション力」だ。
高市早苗首相が就任時に掲げた「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」というスローガンは、とても力強い。しかし、それを実感している日本人は少ないのではないだろうか。
海外に出て、異国の文化にたくさん触れ、その国々の人たちと交流することで築き上げられた人的ネットワークは外交の土台になるはずだ。言うまでもなく、人間関係は一朝一夕でつくれるものではなく、長い年月がかかる。まさに私の信念である「一歩ずつ」の日頃からの積み重ねである。
しかし日本は国家として、英語による社会のシステムネスを構築してきただろうか。世界の共通言語である英語の習得に関しても、私が中学生だった1970年代後半にも義務教育化はされてはいたものの、現在でも本当に使えるレベルまでには至ってないことは周知の事実だろう。
K−POPは米国での人気も高く、国境や言語の壁を越えて世界的に人気を博している。BTSは、米国ビルボードチャートで1位を獲得するなど世界的な音楽シーンを席巻し、多くの韓国系アイドルが高級ブランドのグローバル・アンバサダーに起用されるなど、その影響力は音楽業界以外にも拡大している。
これは韓国のエンターテインメント業界が一丸となって打ち出してきた、英語でのシステムネスに基づいた世界戦略の賜物だろう。海外に目を向けなければ、国内市場が小さく将来の成長性が見込まれないという危機感が生んだ国家戦略だ。
アジア最大級の金融センターであるシンガポールもそうだ。世界や近隣諸国を巻き込む開かれた経済運営を長年徹底している。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域のハブ機能の強化やAI、ディープテックなどの先端分野の主導、自国企業のグローバル展開を柱とし、英語で整えられたビジネス環境を提供するシステムネスはグローバル企業を誘致する大きなメリットとなっている。

