2026年9月8日(火)

World Energy Watch

2026年9月8日

 一般炭輸入量の増加率が約17%にとどまる一方、輸入額が大幅に増加していることから、輸入単価の上昇が輸入額を押し上げたと言える。このため、国内で調達可能なエネルギー源を拡大し、化石燃料への依存を抑えることは、エネルギー安全保障の観点から重要となる。

 また、インドは70年までの温室効果ガス排出実質ゼロを表明しており、大気汚染への対応も含め、電力部門の脱炭素化も求められている。こうした課題への対応として、インド政府は太陽光や風力といった再エネの導入を進めている。再エネ発電電力量は19年の139TWhから25年には298TWhへ倍増し、発電シェアも約9%から約15%へ上昇した。

 ただし、再エネだけで増大する電力需要を安定的に賄うことには課題がある。太陽光は夜間に発電できず、風力も気象条件によって出力が変動するため、需要に応じて発電量を安定的に調整することが難しい。太陽光は冷房需要が高まる日中の供給には有効であるものの、データセンターやAI関連施設のように24時間安定した電力を必要とする需要への対応には、より安定した電源の確保が必要となる。

 そこで重要性を増しているのが原子力発電である。原子力は発電時に二酸化炭素をほとんど排出せず、天候に左右されずに大規模な電力を安定供給できる。

インドの原子力産業

 インドの原子力開発は、48年の原子力委員会(AEC)設置と、54年の原子力庁(DAE)創設を経て、本格的に進展した。69年にはタラプール原子力発電所で米国製沸騰水型炉(BWR)2基が送電を開始し、その後はカナダの技術を基礎とする加圧重水炉(PHWR)の導入・国産化を進めた。

 しかし、インドが74年に核実験を実施すると、カナダや米国をはじめとする欧米諸国は、核燃料や原子力関連資機材の供給、技術協力を停止または制限した。その後、08年9月に原子力供給国グループ(NSG)がインドに対する例外措置を承認するまで、インドは原子炉技術や核燃料をめぐる国際取引を長期間にわたり大幅に制限された。

 こうした国際的な制約の下、インドは従来の自主開発路線を一段と強化し、ウランの探鉱・採掘・加工から燃料製造、重水生産、国産原子炉の設計・建設、使用済み燃料の再処理まで、核燃料サイクル全体を国内で担う技術・産業基盤を整備した。ただし、国内産ウランだけでは需要を満たせず、現在は海外からも調達している。

 26年7月時点で、インドでは24基、計7.935GWの原子炉が運転可能となっている。主力は国産の加圧重水炉(PHWR)であるが、クダンクラム原発ではロシア製加圧水型炉「VVER」も稼働している。

 原子力発電量は25年に53.8TWhを記録したものの、総発電量に占める割合は2.6%と、依然として低い水準にとどまった。現在、インドでは原子力発電の拡大に向け、8基の原子炉(計6.6GW)が建設中であることから、原子力由来のエネルギー供給量は段階的に増加する見通しである。


新着記事

»もっと見る