インド独自の切り札「トリウム」
インドは当面、ウラン燃料を使用する既存型原子炉の増設を進めながらも、長期的には豊富な国産トリウムを活用した原子力燃料サイクルの確立を目指している。その背景には、国内のウラン埋蔵量・生産量が限られていることがある。このため、インドは主にカザフスタン、カナダ、ロシアからウランを輸入するとともに、オーストラリアとも国際原子力機関(IAEA)の保障措置を前提とする供給枠組みを整備してきた。
ウランの安定確保に課題を抱えるインドは、「三段階原子力計画」を進めている。インド原子力庁によると、第1段階では、国内で調達できる天然ウランを燃料とするPHWRの使用済み燃料を再処理し、プルトニウムを回収する。第2段階では、回収したプルトニウム239を高速増殖炉(FBR)の燃料として利用し、ウラン238から新たなプルトニウム239を生成する。
第3段階では、十分な規模の高速増殖炉が整備された後、トリウムの大規模利用へ移行する。プルトニウム239を起動用燃料として使用する増殖炉において、トリウムから核分裂性のウラン233を生成し、これを燃料として利用する。
26年4月に高速増殖原型炉(PFBR)が初臨界を達成した。トリウムの大規模利用には高速増殖炉の本格的な普及が前提となるため、第3段階の商業化にはなお長い時間を要するとみられる。
それでも、インドにとってトリウムを活用する最大の意義は、輸入ウランへの依存を段階的に減らし、国内資源に基づく核燃料サイクルを構築できる可能性にある。IAEAと経済協力開発機構原子力機関(OECD NEA)によると、インドのトリウム推定資源量は世界最多の84.6万トンで、世界全体の約13%を占める。実用化にはなお課題が残るものの、こうした豊富な資源は、インドが長期的に独自のトリウム燃料サイクルを目指す重要な背景となっている。
以上のように、民間参入による「産業基盤の強化」と、トリウム利用を通じた「燃料自給の実現」は、インドの100GW原発計画を支える二つの柱である。インド政府は、自律的なエネルギー安全保障の確立に向け、原子力産業を国家戦略として発展させる姿勢を鮮明にしている。

