その後も 「BOOK遍路をつくる会 」は読書会や交流会、ワークショップ、ZINE制作など、本に関わる活動を地域で展開してきた。香川でイベントを続けるなかで、西原さんは“自分で本をつくった先”として、“自由に本を売れる場所”をつくりたいと考えるようになっていた。
そんな折に、「文学フリマ百都市構想*」を知った。香川で開催する可能性を探るため、西原さんが足を運んだのは、文学フリマ岩手の会場だった。
「直近で行ける場所が岩手だったこともありますが、私は宮沢賢治が大好きで。文学フリマ岩手には、出店者が楽しそうに本をつくり、ゆっくり会話をしながら販売している姿がありました。来場者も目を輝かせながら作品を購入していて、本が好きな人たちが集まる幸せな空間でした」
岩手で感じた雰囲気は、西原さんが香川でつくりたいと思い描いていた空間と重なった。
「もし先に大阪や東京の文学フリマへ行っていたら、『都会は怖い』と感じていたかもしれません。岩手には、地域の誇りとして宮沢賢治がいて、その土地ならではの空気があった。その地域性が一目で伝わることに衝撃を受けました」
その経験こそが、文学フリマ香川の開催を決める大きなきっかけとなったという。
瀬戸内の島々が持ち寄る「アートの香り」
開催を重ねる中で、西原さんは香川ならではの変化も実感している。
「地域によって、文学フリマの空気はまったく違う。それが本当に面白いんです」
例えば香川では、直島、豊島、小豆島など、瀬戸内の島々から訪れる出店者も少なくない。瀬戸内国際芸術祭の舞台でもある土地柄を反映してか、作品にもアート色の強い、独特の傾向が見られる。
たしかに高松の街を歩いていると、様々な場所でアート作品に出合う。暮らしの中に、アート・芸術が身近な存在として位置しているのだ。
「これまで香川が『アート県かがわ』にしようと取り組んできたことが住民たちの心の中に根づいていて、それが自主的な“創作”として可視化されている。それが見えた瞬間、本当に面白いなって思うんです」
*文学フリマ百都市構想:文学フリマを開催したいという有志を支援すること、様々な地域で文学フリマを開催すること、そして各地域間の交流を生み出すことを目的とした取り組み。現在では、全国8都市(東京、大阪、京都、福岡、札幌、岩手、広島、香川)で年間計9回開催されている。(文学フリマHP参照)
