こうした背景には、ペアを普及させ、日本にペア競技を根付かせたいという2人の強い思いがある。実際、木原さんは会見でこんなふうに語っている。
「オリンピックの後、たくさん注目してもらえるようになりましたが、今の一瞬だけで終わらせたくないと思っています。一瞬のことで終わってしまわないように、たくさんのことに挑戦をしていきたいと思っています」
メディアが作り出す人気に対して、「受け身」ではなく、五輪から間もないこの時機を生かすために、周囲のサポートを得ながら積極的に動いていく。婚約者でもある2人は、新たなチャレンジを通じて成長も続けている。
木原さんは「THE DESTINY」のプロデュース経験をこう振り返っている。
「『THE DESTINY』をプロデュースしていく中では、最初は、わからないことが多く、自分たちでミーティングをしていく中でも、意見のぶつかり合いがたくさんありました。今までの呼んでいただくアイスショーとは違って、色々なことに気を配らないといけなかったですし、途中で心が折れそうになった時もありました。しかし、最後に全員で“完走”できたときに、最高の経験になったと達成感を味わうことができました」
そして、今回のツアーに向けても、万全の準備を怠らない。
「THE DESTINY」との差別化を図り、今回のツアーはシングルスケーターも参加する計画で、出演者はすでに10人ほどが決まっているという。
一方で、2人が出演する時間や回数を増やし、ショーならではのリフトも披露する計画だ。そのために、現役時代と変わらないハードなトレーニングを積み重ねているという。
アイスショーのレベルを高められるか
日本国内のフィギュアスケートによるアイスショーは盛況だ。それもそのはずで、日本は2000年代前半以降、数多くのトップスケーターを生み出し、「フィギュア大国」の仲間入りを果たした。そして、人気スケーターたちがプロに転向し、アイスショーへの参入が相次いでいる。
近年の人気が高いアイスショーは、会場外でも配信が行われる。日本におけるフィギュアスケートは「観戦型スポーツ」としても定着したといえる。
一方で、観客席のファンがショーを鑑賞するレベルも高まっている。ショーを開催すれば、客席が埋まるという単純な構造にはなく、どのスケーターが、どんなコンセプトで実現させたアイスショーなのかも観戦動機における重要なウエイトを占める。ある意味では厳しい時代にもなり、スケーターによるショーや演技の完成度はもちろん、スケーターそれぞれが持つストーリーへの共感を呼び込めるかも大切な要素になってきている。
“りくりゅう”も今後、ペアというカップル競技の魅力を、アイスショーという舞台でどのように伝えていくのか。精力的な挑戦は、まだ始まったばかりだ。
