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2014年8月19日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 目を覚ますのです! 友よ、同胞の皆さん。色情に惑わされてはなりません。祖先の気持ちを害してはならない。親が子を産むのは淫乱にするためではない。自分の子供が露出姿で舞台を歩き回っていたら涙するでしょう。出し物に参加する皆さん、もしあなたに人の血が流れているならこの荒唐無稽で恥知らずな舞台から離れてください。

 私たちの国歌はこのように歌います。「立ち上がれ、奴隷に甘んじない人々よ。我々の血肉で新しい長城を築こうではないか。中華民族が最も危険に立ち至った時、一人一人が最後の叫びをあげるだろう」。さあ立ち上がるのです。奴隷に甘んじない人々よ。昨日、我々は帝国封建主義の奴隷にされかけ、今日は無知で道徳の欠如した色情の奴隷として踏みにじられている。中華民族は危険な時にいるのです。

 習近平総書記は、我々は端正な核心価値観を持つよう主張しています。彼は我々全国民が徳治の道を進み、国の鉄釜の飯、人民の糧食を食べ尽くす汚職官吏たち、そしてこのような無知下劣な文化ゴミに操られて西安市民の精神世界が迫害されるのを正そうとしている。中国人にはこのような腐った文化、退廃的な出し物はいりません。私たちはプラスエネルギー(正能量)によって中国の夢を実現させる必要があるのです。中国人のプラスのエネルギーを発揮させる時です。だまされてはいけません。

大連市で行われた成人フェスティバル では日本のAV女優が卵を投げつけられた (共産主義青年団機関紙『中国青年報』ネット版)

* * *

【解説】

 演説の好きな中国人社会だが、中国人の愛国心をくすぐる内容であったことからも評判を呼んだ。セックス製品見本市での演説という意味でも注目を浴びた。おまけに「性博覧会」には後日談もある。8月初頭に遼寧省大連市で行われた「成人見本市」でも同じように中年女性によって出演した日本のセクシー女優、丘咲エミリさんと北川杏樹さんが舞台に上がった際に腐った卵を投げつけられるというハプニングがあった。会場の外には「国恥を忘れるな」との横断幕も掲げる抗議者も現れた。軍事的な侵略の傷跡が癒えぬまま、今度は色情文化による「平和的手段による転覆(和平演変)」と捉える市民は少なくなく、大連での抗議活動は西安での抗議に端を発したものかもしれない。

 それにしても日本を含む欧米の色情文化による浸食への警戒心を見ると中国社会に広まる危機感が窺い知れて興味深い。特に日本の成人ビデオの海賊版は中国社会に広く行き渡り、ほとんどの若者がセクシー女優の蒼井そらさんを知っていて「老師(先生)」と呼ばれるほどである。それでも演説した女性のような人からするとこうした「文化的侵略」への嫌悪感は激しい。

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