六、効率的に買いたい
都心から成田空港への途中にあるショッピングモール・ららぽーとTOKYO-BAY(船橋市)には、平日にもかかわらず観光バスが横付けされていく。旅行最後のショッピングを前に浮き足立つ中国人セレブたちは、五星紅旗を思わせるデザインの中国版店舗マップを手に取り店内になだれ込んで行く。
マップを開いてみると、全部で540ある店舗のうち、店舗名が載っているのはレストランと僅か20ほどのテナントのみ。その代わり、掲載されているテナントは全て写真付きである。「限られた時間の中で、いかに買い物をしやすくするかを考えた結果」と、ららぽーとマネジメントの雀部優・運営企画部長はその狙いを説明する。
彼らの買い物時間は1.5~2時間と少ないため、中国人に人気の店をピックアップすることで、店探しにかかる時間を省いている。買う気満々のセレブたちに効率良く買い物をしてもらえれば売上げにも直結し、店舗長からも好評を得ている。「今後空き店舗が出れば、各テナントの売れ筋商品をそこに集約することも検討している」(同)とさらに動線短縮の試みは続く。
もちろんセレブのニーズを外すと大損失にもなりかねないため、バスに戻った買い物客へのアンケート調査も定期的に行っている。ちなみにその際に配る、施設ロゴが入ったボールペンやクリアファイルが大人気という。
七、決済はスムーズに
中国人観光客に大金を落としてもらおうと考えるならば、銀聯カードの導入をお勧めしよう。銀聯カードとは「中国人旅行者のほとんどが決済に利用している」(仁田氏)というほど、セレブたちの間でポピュラーな中国版デビッドカードである。
中国では1回の出国につき1人5000米ドルが上限の外貨持ち出し制限が課せられており、ATMでも1日に1万元(約15万円)しか引き出せない。こうした事情により、現金を持ち歩く必要がなく、銀行口座の残高分だけ買い物ができる銀聯カードが海外旅行には今や必需品となっている。
現在、中国を中心に香港・マカオなどの200以上の金融機関が加盟し、08年末で約18億枚発行されている。銀聯カードの決済業務を行う三井住友カードによると、日本では09年3月時点で1万2700のホテルや商業施設などが加盟しており、この3年で37倍に急増している。それに合わせ、取扱高も06年の約10億円から08年には130億円にまで伸びている。銀座、秋葉原、心斎橋など中国人観光客の人気スポットでは、多くの店舗で銀聯カードのマークが目に付く。
またヨドバシカメラでは全店で銀聯カード利用者に対して5%割引を実施したり、ドン・キホーテでも新宿店、銀座本店などの5店舗で、オリジナル手拭いを進呈したりと、利便性を高めるだけでなくカード利用者に付加価値を付けることで購買意欲を刺激しているところもある。