2022年11月29日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年9月29日

»著者プロフィール
閉じる

原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 定型業務なら成果が分かる。伝票を何枚処理したか、売掛金をどれだけ回収したかは成果として見える。仕事の速い人に成果で払ってたくさん仕事をしてもらえば、仕事の遅い人に残業させる必要はなくなる。

 間接部門の下働きのホワイトカラーの仕事が増えるのは、上司が基本的な方針を出さないからである場合が多い。あらゆる場合を想定して資料を作れば、いくらでも資料が増える。上司が基本的な方針を示せば、作るべき資料は一挙に減る。

 もちろん、あらゆる場合を想定することが必要な場合もあるだろうが、それがもっとも必要な原子力発電所では、そんな資料は作っていなかった。もちろん、1990年代の初め、不良債権を処理したらどうなるかという資料を作っていた場合も多かっただろう。しかし、その資料は活用されなかった。実際には、ほとんどは意味のない資料を作っているだけではないか。

 日本の海外M&Aは失敗の連続である(「特集 あぶない 企業買収」週刊東洋経済14年6月7日号参照)。事前によく調べるべきなのだが、大抵は買収するという結論が決まっていて、部下は、それをサポートする資料を作っているだけだろう。もちろん、被買収企業が不良資産を隠していたなど、決定的な問題を発見すれば上司に告げるだろうが、多くは経営能力があれば解決できると解釈できる程度の問題である。問題だというのは、上司に経営能力がないと言うのと同じになる。そんな資料を上司には持っていかないのがサラリーマンというものだ。

 つまりは、間接部門の下働きのホワイトカラーとは、していることが本質的に無駄にならざるを得ない環境にある。

 そうであれば、つまらない資料などに頼らず、社長が決断すれば良いだけだ。間接部門の下働きのホワイトカラーの残業代を減らせば、つまらない資料をもっとたくさん作るだけだ。

 筆者は前に、管理職に部下の残業代を上乗せして払い、管理職にその中から残業代を払わせれば良いと提案したことがある。そうすれば、自分が判断するために何が本当に必要な情報かを真剣に考える。それは、自分の決断の意味も真剣に考えることになる。それこそが、日本企業をより活性化するのではないか。規制改革だけ行っても、会社が変わらなければ意味がない。

 ◆Wedge2014年9月号より









 

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

新着記事

»もっと見る