筆者は、日本弁護士連合会の調査団と共に8月末にシンガポールのOne Hope Center他の依存症救済に取組む団体へのヒアリング調査を行った。実感したのはカジノによるギャンブル依存者拡大を防ぐことは困難であり、一旦依存症になったギャンブラーの治療は困難だということである。シンガポールでは市民からの入場料徴収やカジノ立入禁止措置申告制度が導入されているが十分機能していない。入場料を取り戻そうというギャンブラーの行動を促進し、依存症にかかった後の申請では事後対応となってしまっている。
センターに救済を求めるギャンブラーはカジノ開設以降急増しているが(表3)が多くは立入禁止を受けているという。また賭け金を融資する「シャークローン」と呼ばれる闇金や質屋がカジノ開設以降急増しているという。
IR推進法案は、余りにも多くの問題の検討を抜きにしてカジノ合法化を実現しようとしているのではないだろうか。パチンコによるギャンブル依存症問題も含めて、十分な調査を踏まえた徹底した議論が行われることを心から願ってやまない。