このような政府の英語教育に関する混乱ぶりを見ても、韓国の英語教育に対する要求の高さがうかがえる。韓国では、早期留学ブームの後、“国内留学”を掲げた英語教育に特化する学校が新たに出てきた。また早期留学から帰国した学生らを対象とするような大学の学部や大学院学部の新設も進み、そのような課程では全ての授業が英語で行われている。
それでも続く小学校からの早期留学ブーム
しかし興味深いことに、小学校の早期留学生の数は、中高校生に比べると減少の幅が少ないこともまた明らかになった。ここでもう一つ、筆者の知人家族の例を挙げる。彼女は8歳と5歳の息子を連れて2年前にオーストラリアに移住した。最初はブリスベンの親戚の家を訪ね家族旅行をするつもりだったが、韓国とのあまりの生活環境の違いにその後本格的な留学の準備に取りかかった。父親はその後韓国の会社を辞めラオスで起業をしたが、現在でも2カ月に一度は定期的に家族が会い、2週間ほど時間を過ごすという。
家族が子どもたちの早期留学を選択した理由は、子どもの多様性を尊重するオーストラリアの教育に魅了されたからだと話す。競争社会の韓国とは違い、他人の目を気にすることなく、ストレスを受けることなく生活できるという。最初は彼女が学生ビザを取得し、子どもたちは同伴家族として滞在していたが、子どもが学校に入ってからは彼女は保護者ビザで滞在している。語学習得と、子どもの個性や多様性を育てたいという目的から現在の生活を選択したが、家族は全員とても満足しているという。
また、韓国国内のインターナショナルスクールへの入学も考えたが、その費用とオーストラリアでの生活・教育費用はさほど変わらないため、生活の質を求めてオーストラリアでの生活を選択した。オーストラリアやニュージーランドへの留学も人気が高いが、最近では英語と中国語を両方習得できるという理由からシンガポールへの留学も話題になっているという。
子どもに対する親の意識の違い
ベネッセの研究所は、5年毎に「幼児の生活アンケート:東アジア5都市調査(東京・ソウル・北京・上海・台湾)」という調査を実施・公開している。幼児の生活や子育て意識に関するアジア各都市の比較調査は大変興味深い。2010年に公表された結果によれば、各国の子どもの習い事は、東京の上位3項目がスイミング(20.8%)、定期的に教材が送られてくる通信教育(20.2%)、体操(13.9%)の順であったのに対し、ソウルは、ハングル(39.4%)、英語(33.6%)、数学/暗算(31.9%)の順であることがわかった。身体を動かす習い事が多い東京の結果にくらべ、ソウルの子どもたちは学習系の習い事が圧倒的に多い。