世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月27日

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 中国の台頭を受け、我々は、都合の良い仮定を取り除き、中国を新たな気持ちで研究しなければならない、と述べています。

 出典“Misunderstanding China”;Michael Pillsbury;WSJ;Sep.17 2014
http://online.wsj.com/articles/misunderstanding-china-1410972607

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 筆者ピルズベリーは、40年間中国を研究してきた、中国研究の大ベテランです。論説では、西側がどのように中国を見誤って来たか、具体的に事例を列挙し、その原因を正確に分析しており、参考になります。

 これまでに間違った分析や判断が多く行われたのは、言うまでもなく、中国に関する情報が基本的に隠蔽されているからです。中国についての、あるべき分析方法は、毛沢東時代以来なんら変わるところはありません。それは、中国側の公式記述・発表(例えば、人民日報や新華社電など)を丹念に読み解くことに加え、記述されていない部分を想像力で補う、という二つの作業を総合的に必要とするものです。これらのうち、どちらかに大きく片寄る場合には、ピルズベリーの言うように判断は片寄ってしまい、自分の都合の良いレンズで見てしまうということになります。

 米国から、この論説のような問題提起が出て来るのは、歓迎すべきことです。米国が、「責任あるステークホルダー論」に幻想を抱いたり、「新型の大国関係」のような表現に騙されやすかったりするのも、ピルズベリーが指摘するような、これまで中国に抱いてきたイメージが抜けない点に原因があるのでしょう。

 中国への誤ったイメージを抱いてきたのは、日本も同様です。論説にある「礼儀正しい儒教の国」といったイメージは、特にそうでしょう。しかし、2010年の尖閣諸島近海での衝突事件を大きな契機に、中国へのイメージは激変しました。これと同様に、中国軍機による米軍機への異常接近のような、米国が危険を感じるような事態が続けば、楽観的イメージは、米国でも、より早く払拭されていくかもしれません。

 論説は、今日の習近平体制が「毛沢東の死後のどの時期よりも強力で、国家主義的で、一党独裁の維持に強くコミットしている」と言っていますが、習近平体制は、強力だから独裁維持を目指しているというより、むしろ、不安があるからこそ独裁維持に汲々としているというべきでしょう。経済的に発展し、対外的に開かれて来れば、国際協調主義を取り、徐々に自由化が進むだろうと一時考えられた「軟着陸」については、その可能性がますます遠のきつつあります。国内的施策は締め付け一方であり、いったん緩めると一党独裁体制のタガがはずれる可能性があることを恐れているに違いありません。最近の腐敗・汚職の撲滅の動きには、多分に政敵攻撃の要素があり、習体制の政権基盤が必ずしも安泰とは言えないことを示しています。「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」という状況に如何に歯止めをかけるかという点こそ、習体制にとっての喫緊の課題でしょう。

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