オトナの教養 週末の一冊

2014年10月31日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――その違いとは?

鹿又:ウィスコンシン・モデルという研究方法では、親の階層的地位だけでなく、出身家庭のさまざまな条件、意欲と成績、認知的能力といった要因を幅広く考慮しています。

 一方で、最近の日本では、階層間で不平等に保有される文化資本が、他の資本と同様に世代間で伝達され、この世代間の文化的再生産が学歴と階級の再生産をもたらすという文化資本論、また高い学歴を獲得しようとする意欲が親の職業階級によって異なり、この意欲差が学歴格差を生み出すとする相対的リスク回避説などを取り上げた研究が多い。そして出身階層の影響によって早い段階で分岐したトラックのひとつに所属すると、それが後の進路や進学先というトラックに連結して強く影響するというトラッキング説もあります。

 これらの研究では、親の職業や学歴や所得を進学や学歴格差の発生源と見ています。また、トラッキングを扱う研究でも出身階級・階層から進学ルートへの影響が強調されています。つまり、日本の研究では、進学格差の発生源を階級・階層に限定し過ぎている。

 また、この本では書けなかったのですが、遺伝的な認知的能力の影響もどの程度かはわからないにせよ、分析上考慮する必要はあるのではないかと思います。

――これまで日本ではなぜ認知的能力について考慮されてこなかったのでしょうか?

鹿又:日本の社会調査データとして存在しないという点もありますが、教育に関する研究をされている方々の中には、遺伝的な知能の差というものがあると「平等」ではないという考え方があるように見えます。

――しかし、一般の人からすれば、そういったものは肌感覚としてあるようにも思うのですが。

鹿又:科学的に考えようと思えば、そういう視野は必要ですよね。

 しかし、誤解して頂きたくないのは、貧困が増えていないとか、そのことで進学を断念せざるを得ない子どもたちがいることを否定しているつもりはありません。報道などを見ても、貧困家庭が増えていて、子供の進学に影響していると実感しています。

 ただ、そういった子どもの数と、進学の機会の格差というメカニズムは別のもので、今回の研究ではメカニズムそのものとしては、強いトラッキングがあるという点でみなさんの常識的な感覚に当てはまる結果になったと思います。

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