中国メディアは何を報じているか

2014年11月14日

»著者プロフィール
著者
閉じる

佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

 また、今に至る関係悪化の原因が一方的に日本側にあると明言している。

 「釣魚島」の初の文字化に言及したことは、4つの原則共通認識の中に「釣魚島」という文言が盛り込まれたことへの中国側の満足感を表している。その直後に「日中関係の現在の政治的膠着状態の起点を振り返ると、『島の購入』という茶番の殺傷力が極めて大きかった」と言及し、2012年8月の日本政府の尖閣諸島国有化宣言を厳しく非難している。このことは、4つの原則共通認識の中に「釣魚島」の文言が盛り込まれたことで、両国のあいだに尖閣諸島をめぐる領有権問題が存在することを日本が認めたと中国側が解釈していることを意味している。これが中国側の「満足感」である。

 とりわけ興味深いのは、この論評に署名がないことだ。この種の論評にはたいてい、「新華社」や「本報(『人民日報』のこと―筆者注)評論員」や「本報記者」、専門家の実名、または「鐘声」といったペンネームの署名が入る。しかし、この論評には署名がない。

 日本寄りの内容には思えないが、このご時世ではどのように解釈されるか分からない。署名を入れないことで、特定の筆者が批判を受けるリスクを回避しようとしたのだろうか。それほど中国側は4つの原則共通認識で合意したことに対し中国国内の反応に敏感になっているということだろう。

特異だった日中首脳会談

【11月10日 習国家主席が安倍首相と会見】

 11月11日付『人民日報』は2面で、会見を次のように報じた。

習近平国家主席は10日、人民大会堂で申し出に応じてAPECサミットに出席した日本の安倍晋三首相と会見した。

この2年日中関係に深刻な困難が出現したことは理非曲直(道理に合っていることと外れていること)がはっきりしている。双方はすでに日中関係を処理、改善する4つの原則共通認識を発表している。日本がしっかりと共通認識の精神に沿って関連問題を適切に処理することを希望する。

歴史問題は13億以上いる中国人民の感情に関わることであり、この地域の平和、安定、発展の大局に関係している。日本が日中二国間の政治文書と「村山談話」などの歴代政府が出した承諾を守ってこそ、アジアの隣国と未来志向の友好関係を発展させることができる。

安定した健全な日中関係は時代の進歩の潮流に順応すべきである。日本が引き続き平和発展の道を歩み、慎重な軍事安全政策をとり、隣国の相互信頼に有利な行動をとり、地域の平和安定を守るために建設的な役割を果たすことを希望する。

 『人民日報』は、習主席が安倍首相と会見したことを、この日韓国大統領、ベトナム国家主席、ブルネイ国王、マレーシア首相、パプアニューギニア首相ら5カ国の要人と会見したこととセットで報じた。しかしその報じ方から、習主席と安倍首相の会見が特異なものであったことが分かる。

関連記事

新着記事

»もっと見る