エネルギー問題を考える

2014年11月20日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

NPO法人社会保障経済研究所理事長

1989年東京大学工学部卒業後、通商産業省入省、電力・ガス改革に携わる。退官後、内閣官房企画官、規制改革会議WG委員などを歴任。

 もともと規制されていないLPガス料金は、多くの場合、料金規制のある都市ガス料金に比べて高止まりしている(図4)。料金表もない不透明な料金への苦情も多いことを十分に承知している消費者団体は、さすがに危機感を持ったか、一斉に蜂起して都市ガスの消費者保護措置を求める「国民の声」を提出した。経産省はそれに押される形で、9月にはそれら規制の「撤廃」を「移行措置」として残す譲歩案を出してきた。

 全面自由化を了解してしまった都市ガス業界は、経産省やガス小委に対して猛烈な巻き返しを行うはずだ。それは「移行措置」の対象除外となる都市ガス事業者拡大と移行期間の短縮である。9月のガス小委では、「移行措置除外の競合指標は、都市ガス供給区域内で都市ガス世帯利用率75%。移行措置は3~6カ月で廃止も一案」と、その目安まで発言する委員も出ている。経産省も、得意の不透明なサンプルデータ作戦で援護射撃をしている。

 都市ガス世帯利用率75%で裾切りすると、都市ガス業界第3位の東邦ガスや第4位の西部ガス(消費者件数が100万件を超え、東京ガスと比べて家庭用同一使用量で2~3割ほど割高と言われる)にも、消費者保護規制はなくなる。また、9割の都市ガス事業者が「移行措置」の対象外となる。残り1割の都市ガス事業者も数カ月の移行措置期間が終われば、LPガス並の高止まり料金となるだろう。

 筆者は、料金規制の撤廃は、特に都市ガスどうしの競争がない地方では、他燃料への転換が困難な家庭消費者の料金値上げに直結すると確信する。その悪影響は、飲食店や中小製造業のガス料金にも波及するだろう。大手全国紙の調査によれば、消費増税後に削減したい家計費は、ガス料金が電気料金・通信料金に次いで堂々の3位。家庭生活で必要不可欠な支出だが、毎月の口座引落しだと徐々に値上がりしても気付かない。まさに、茹で蛙へのボディーブローのように家計を圧迫するようになる。

 今後更なる消費増税となれば、電気、ガソリンに加えて都市ガスの価格上昇というトリプルパンチは、現政権の看板政策である「地方創生」に冷や水を浴びせることになろう。

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