2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月24日

 フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのデヴィッド・ピリングが、10月15日付同紙にて、円安は、日本にとってメリットもデメリットもあるが、デメリットに気をとられ過ぎて、アベノミクスの柱である円安政策を放棄して、アベノミクスを損なうべきではない、と指摘しています。

 すなわち、弱い円は、安倍総理のリフレ政策の重要な柱である。大規模な金融緩和の推進は、円をドルに対して26%下落させ、輸入価格が上昇し、消費者物価を日銀の2%のインフレターゲットに向けて押し上げるのに役立った。しかし、弱い円は、日本にとって、もはや、良いことだけではないかもしれない。

 それには、いくつかの理由がある。一つは、48基の原発全てが停止した結果、はるかに多くの、石油、LNGを輸入するようになり、弱い円が、貿易収支を悪化させている。対外投資からの多くの収益があるが、最近では、拡大する貿易赤字を相殺するには十分ではない。

 もう一つの理由は、日本はもはや輸出経済ではない点である。日本の輸出は、GDPの15%に過ぎない。

 安倍総理は、明らかに、弱い円の利点について再考している。6年ぶりに1ドル110円台に下落した時、安倍総理は、円の下落には良い面と悪い面があると述べた。黒田日銀総裁は、釈明のため、国会に招致された。政府と日銀の亀裂の徴候は、アベノミクスへの信認を弱めかねない。もう一段の量的・質的緩和をためらうようなことがあれば、インフレ期待の定着に失敗し、リフレ政策全体が挫折し得る。

 弱い円はメリットだけではないという安倍総理の認識は正しいが、今ふらつくことは、災厄である。持続的な物価上昇は、アベノミクスの中心眼目である。デフレに戻ることは、それを全て捨て去ることになる。好むと好まざるとに関わらず、弱い円は、アベノミクスの一部である、と述べています。

出典:David Pilling, ‘A weak yen is no panacea but Shinzo Abe needs it all the same’(Financial Times, October 15, 2014)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/7c26583e-52ed-11e4-b917-00144feab7de.html#axzz3GKssX5qP

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 アベノミクスについては、近隣窮乏化政策である、通貨操作である、といった批判もありますが、円安それ自体を目的としているというよりは、金融緩和が主眼であり、円安はその結果として起こっていると捉える方が正確でしょう。最近は、ピリングが言うように、円安のデメリットが指摘されています。円安によって輸出数量が伸び、国内生産が増加し、経済の拡大に貢献することが期待されていたにもかかわらず、円安でも輸出数量が伸びず、期待された経済効果が見られず、他方、円安で輸入物価が上昇し、購買力の低下につながっている、という指摘です。


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