花や虫を愛し、自然をテーマにした挿絵や絵本作品を数多く手がけてきた熊田千佳慕(ちかぼ)。数えで99歳の今も、ライフワークである「ファーブル昆虫記の虫たち」の完成を目指して、こつこつと絵筆を動かしている。
そんな彼の代表作およそ220点を集めた展覧会が、8月12日から24日まで東京の松屋銀座8階の大催場で開催される。
明治44(1911)年、横浜で生まれた千佳慕は、東京美術学校(現東京藝術大学)在学中から、日本の商業デザインのパイオニア山名文夫(やまなふみお)に師事。卒業を待たずにデザイナー・写真家集団「日本工房」に入社し、同僚のカメラマン土門拳らと数々の仕事を手がけた。
戦後は絵本作家の道へ進み、『ふしぎの国のアリス』『みつばちマーヤの冒険』『オズの魔法使い』といった名作の挿絵や絵本を発表する。細い筆で1本1本繊細に描きこむ彼の作品は、完成までに1年も2年もかかる。そのため、金銭的には苦しい日々が続いたという。しかし、嘘やごまかしのない、徹底した観察に基づいたリアルな表現と、小さな命に対するやさしいまなざしは世界中の人々を魅了。ボローニャ国際絵本原画展で入選するなど、高い評価を受けた。また、フランスでは「プチファーブル」と称賛された。
自然を愛し、貧しくとも自らの信念を貫いて、誠実に生きる彼の生き方もまた、今、多くの人の共感を得ている。生きる喜びにあふれた“千佳慕ワールド”に触れてみたい。
99歳の細密画家 プチファーブル・熊田千佳慕展
東京都中央区・松屋銀座8階大催場(東京メトロ銀座線銀座駅下車)
〈問〉松屋銀座 03(3567)1211〔代表〕
http://www.matsuya.com/ginza/index.html
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