2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月8日

 中台間の敵意も、スパイも、減少していない。ひまわり運動が両岸関係を冷却化させなかったならば、馬はAPECで習と会うために、不利な条件を飲んでいたかもしれない。中国と適切な距離を保つことが、台湾の外交関係を安定化させることになる、と述べています。

出典:“Cool cross-strait ties benefit Taiwan”(Taipei Times,October31,2014)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2014/10/31/2003603301

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 香港で起きた「雨傘革命」は、当局による学生運動を孤立化させる作戦が奏功し、差し当たり、当局側に有利に事態が推移しているようですが、こういう運動が起こったこと自体、中国共産党政権への打撃は図りしれないものがあります。その一つは、ちょうど香港が中国に返還された前後に生まれた世代の学生たちの造反が、香港における「一国二制度」の実験が失敗に終わったことを示し、その欺瞞性を露呈させたことにあります。

 香港で起きた抗議行動の光景を見て、台湾民衆の心はますます中国から離れ、1945年8月15日以前から台湾に住んでいた「本省人」だけでなく、中国に親近感をもつはずの、それ以降に大陸から移住してきた「外省人」たちも、中国共産党政権の体質に恐怖感や嫌悪感を強く感じたことでしょう。「雨傘革命」発生直後の、馬英九総統による香港学生運動支持への発言や「一国二制度」を拒否する発言は、まさに、台湾の民意の変化の反映でしょう。習近平主席が進めようとする「一国二制度」という枠組みを使っての台湾「平和統一」は遠のいたと思います。

 馬英九総統は、最近、記者との会合で「私の任期中、大陸との統一について議論することはない」と述べたと報じられています。これは、大陸との経済関係の推進は追求するが、主権の問題では譲ることはない、とのメッセージです。しかし、11月29日の統一地方選挙の結果を受け、馬政権としては、両岸の経済関係を推進することは、より一層困難になるでしょう。他方、中国側は、10月の福建省視察で習近平が台湾の経済界に対し、経済関係強化、特に平潭総合実験区の推進を呼びかけ、時期を同じくして、TAOは「一国二制度」ではなく「1992合意」を認めるような声明を出しています。中国は、今後とも、硬軟織り交ぜた対応で、台湾に揺さぶりをかけていくものと思われます。

  
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