2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月15日

 11月10日の会談は、日中関係の新しいスタートであるとの希望を抱かせるが、それがそうなるかは、結局のところ、中国にかかっている。日本の政治家もしばしば中国に対して挑発的な行動をとるが、両国間の緊張の高まりの維持を、威圧的な外交の正当化と国内の感情的結束に役立つと見てきたのは、中国である。日本の指導者との間でより実務的な関係を追求し始めるならば、習は多くの国際的信頼を獲得できるであろう、と述べています。

出典:‘A ray of hope for China’s relationship with Japan’(Financial Times, November 10, 2014)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0a6464b4-68de-11e4-9eeb-00144feabdc0.html#axzz3J2rGnxiO

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 この社説は、日中首脳会談が開催されたことを歓迎しています。そして、安倍総理が習近平に会談を呼び掛けてきたことを指摘し、日本に好意的な立場を示しています。他方、中国に対しては、日中の緊張関係を威圧的な外交の正当化と国内の結束に利用してきたとして、会談が日中関係の新しいスタートになるかどうかは中国次第である、と指摘し、日中関係の現状に関する中国の責任を論じています。日中首脳会談を実現させたことは、日本外交にとって大きなプラスとなったと言ってよいでしょう。

 社説で一点だけ気になるのは、尖閣を国際的調停に委ねるようにとの提案のくだりです。「日本は主権についての争いが存在することを認めるという譲歩をすべきである」と言っていますが、国際調停に委ねるとしても、「主権についての争いは存在しない」との日本の主張を変更する必要はありません。その上で、日本としては、中国側が国際司法裁等に提訴するのであれば、喜んで裁定を受ける用意がある、との立場を明確にしておくべきです。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、エコノミストと並んで国際的影響力の大きなマスコミですが、共に、時として日本に厳しい論調を書いています。本欄でもたびたび指摘してきたとおり、これは、英国が依然として第二次世界大戦の戦勝国としての視点に立っていることを示すものと言えるでしょう。そのフィナンシャル・タイムズ紙が、中国に批判的で、日本に好意的な論説を掲げたことは、特に歓迎すべきことです。英国の主要メディアが、第二次世界大戦に基づく日本観を少しでも修正するよう、今後とも働きかけていく必要があります。

  
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