2024年11月26日(火)

Wedge REPORT

2009年7月21日

 顧客開拓にも工夫をこらし、人間が掃除した場合と比べたコストの安さを徹底的に追求、採算性をアピールして拡販に努めた。その結果、エレベーターと連動させるためのシステムとあわせて、1台あたり2000万円という値段ながら、すでに60台近くを販売し、年に数回のメンテナンスと部品交換で事業を黒字化させた。企業がリスクを取って先陣を切り、市場開拓に成功した好例だ。

国の支援体制で諸外国に劣る

 もう一つ、企業サイドから生活支援ロボットの普及に向けての注文がある。これは特にベンチャーにとっての恨み節なのだが、「国を挙げて新産業として支援するというビジョンに欠ける」という指摘は、取材した複数の企業から聞こえてくる。

 昨年4月に韓国知識経済部(日本の経産省に相当)と知能型ロボット開発支援で、韓国進出時に優遇措置を受ける覚書を締結した、先に登場のテムザック。高本社長が決断したのは「韓国の国を挙げた産業育成の姿勢」にあったという。

 韓国が成立させた「知能型ロボット開発及び普及促進法」は、知能型ロボットの品質保証機関の設置や保険制度の制定、ベンチャーなどロボット開発企業に投資する知能型ロボット投資会社(ロボットファンド)の創設や、ロボットランド(特区)での実証実験から実際のビジネスに繋げる仕組みづくりなど、産業育成に向けた国の取り組みが明確だ。

 こうした仕組みは、EU(欧州連合)が02年から民間主導で域内の産業振興、戦略分野を策定し行政や研究機関が参画する欧州テクノロジー・プラットフォーム(ETP)でも、実際のビジネス化を前提とした研究開発体制が敷かれているし、米国でも国防総省が軍事技術の民間転用等、ETPと同様の役割を担う。

 対して「日本は研究開発から実用化、ビジネス化に向け、省庁間の垣根を超えて一気通貫に支援する仕組みに劣る」という声は多い。

スピード感なければ競争に敗れる

 国内の有形無形の壁に苦しむのなら海外で事業化すればいいかというと話はそれほど簡単ではない。ロボット開発の多くは国の研究予算が投入されており、軍事転用などの理由から海外へは容易に持ち出せない。さらに「仮に海外でロボット事業を展開するにしても、トータルコストで採算があわない」(機械メーカーの技術者)という事情もある。


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