また、ウクライナ危機による対露制裁は、ロシアと関税同盟を組んでいるベラルーシ、カザフスタンにも影響を与えることとなった。ロシアが報復措置で欧米からの輸入を大きく制限する中、ベラルーシ、カザフスタン経由でそれら被制限品がロシアに入ってくるケースが増えたのに鑑み、ロシアが両国からの輸入を一部制限する措置をとったことは、両国、特にベラルーシの大きな反発を招いている。さらにベラルーシ、カザフスタン両大統領は、12月末からウクライナの和平に向け、勝手な独自外交まで始める始末だ。両国共に、ロシアと心中する用意はなさそうだ。
ベラルーシでは12月27日に首相や経済関係の閣僚、中銀総裁らが解任されており、経済の悪化を阻止できなかったことを引責させたとも考えられている。
そして、ルーブル下落の混乱は旧ソ連諸国の為替レート下落や通貨切り下げにもつながった。
ベラルーシのベラルーシ・ルーブルやカザフスタンの通貨・テンゲ、アルメニアの通貨・ドラム、モルドヴァの通貨・レウは10~20%の下落を見せたという。カザフスタンでも12月半ばからルーブルが崩壊する前に車など価値の高いものを購入する動きが活発化した。
2015年にはいり、トルクメニスタン中銀は1月1日以降、通貨マナトを対ドルで19%低い1ドル=3.5マナトに切り下げ、ベラルーシ中銀は1月5日にベラルーシ・ルーブルの対ドル公式レートを約7%引き下げると発表すると共に、外貨購入の際の税率を10%へ再度(昨年12月に、外貨購入時に30%の税を課す制度を導入していたが、その後20%に引き下げていた)引き下げたと発表した。
またロシアでは、南コーカサスや中央アジアの諸国やモルドヴァからのかなり大勢の出稼ぎ労働者が働いているのだが、11月頃から外貨建てでの給料が激しく目減りし、そのことも近隣諸国の一般市民に大きな影響を与えている。
1月1日には経済同盟が始動
このように、ルーブル暴落の煽りを受け、親露的な旧ソ連諸国間の連帯にもすきま風がふくなか、発足が危ぶまれていたロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニアによる「ユーラシア経済同盟」が2015年1月1日に予定通り発足した(キルギスも5月1日に正式加盟の予定だが、キルギス政府が加盟延期を決定したという報道も少数ながらあり、不透明)。プーチンは同同盟を欧州連合(EU)に対抗しうる経済ブロックにまで成長させ、将来的には政治統合も視野にいれていると主張してきたが、ロシア経済の停滞で明るい展望を描けなくなってきている。同同盟は、発足には十分な準備がまだ出来ておらず、見切り発車となったが、それでもプーチンの威信をかけて予定通りの発足をともかく強行したと考えられる。