2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2015年1月16日

 日本の貧困ギャップは、ユニセフ・イノチェン研究所のレポートによれば、31.1パーセントで、レポートに登場する31カ国のうち下から6番目です。また、日本で貧困状況にある子どもたち、つまり貧困ライン未満で暮らす子どもの所得の中央値(個人額)は86万円程度で、これは親子2人で月に約10万円、親子4人の世帯で約14万円で、1カ月生活しなければいけないことを意味します。また、この数字は中央値ですから、貧困ライン未満の子どもたちの50パーセントにあたる160万人は、この額未満の所得の家庭で暮らしているということです。

――親子2人で月に10万円で生活ですか…。

山野:子育て家族の支出は、低所得になれば少し下がりますが、貧困ライン未満の場合でも平均で月額20万円くらいから下がりきれないのが現実です。そうすると、どう考えても所得より支出のほうが大きくなります。どうやって生活しているのかわからないので、そのあたりについては現在分析中です。

 ひとつの可能性は、借金をしているのではということですが、ただ、一般的に日本の子育て世帯は、平均すると借入と貯蓄額がほとんど同じなのも事実なんです。これは家を買うために、住宅ローンが影響しているからです。欧米だと公営住宅がわりと充実していますが、日本の住宅制度は見事に失敗しているからだと思うんですね。

――貧困が子どもたちへ及ぼす影響にはどんなことがあるのでしょうか?

山野:現在、注目を浴びているのは学力格差の問題です。これについては、様々な調査から明らかになっています。ただ、学力そのものだけでなく、日本の場合、大学の学費が欧米諸国に比べ高いこともあり、学歴にまで差が出てしまっているのが現状です。

 また、ぜんそくなどの環境が影響する病気の罹りやすさにも影響することが明らかになっています。ただ、学力の問題以前の部分も大きいと私は考えています。

――「学力の問題以前」とは、どういうことでしょうか?

山野:乳幼児で獲得しなければならない愛着であったり、他人を信頼できるかどうかという問題です。現在、幼児教育の世界では、詰め込み型の教育は子どもたちの学力とほとんど関係がないと言われています。それよりも、詰め込み型では形成されない応用力や思考力を育てるためには、他人とどれほど協力できるか、もっと言えば親や保育士などとどれだけ信頼関係を築けるかが重視されています。


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