オトナの教養 週末の一冊

2015年1月16日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 欧米では、3歳以降の就学前3年ぐらいの幼児教育や保育を受けるのは当たり前で、なおかつ無償またはそれに近い状態です。これは小学校への準備という要素が全くないわけではありませんが、北欧では子どもたちの自由さや、子どもらしくあることを家の中だけでは保証出来ない面もあるので、集団で子ども同士の協力関係や、保育士さんとの関係を築く教育が行われています。つまり、誰かと協力したり、誰かを信頼できるというのは、子どもたちの情緒的な安定につながるわけです。ただ、それをお金を持っている人しか受けられないのでは意味がありません。ですから、保育の普遍主義と言いますが、どんな子どもでも無償で受けられるようになっています。

――確かに勉強する前に、環境が安定していないとなかなか難しい面もありますね。

山野:そうですね。日本の低所得者の人たちは、ワーキングプアと呼ばれる人がほとんどです。欧米には、働いていなくて、福祉に頼って生活している人たちもいます。しかし、日本では、そういう人たちは少なく、ほとんどの人たちが働いているにもかかわらずワーキングプアになってしまう。制度として最低賃金がある国とない国がありますが、ある国の中で日本は最下位のスペインと大差ありません。そんなにひどい最低賃金ですが、先ほどの貧困ラインの所得額などから計算すると貧困な人は最賃ぎりぎりで働いているのがほとんどなのではないでしょうか。

 当然、子育て家族の場合、それだけでは生活できないので、他にも仕事を掛け持ちすることもあるでしょう。そうすると、労働時間が長いため、子どもと接する時間が短くなります。ひとり親や女性では平日でも見られることですが、男性の場合、平日に関しては低所得であろうがなかろうが、子どもと接する時間に差はありませんが、土日になるとハッキリと差が出てきます。こうして、親と子どもが接する時間が少ないために子どもたちの情緒の安定にも影響してしまっているのではないでしょうか。

 また、低所得の夫婦は、喧嘩やドメスティックバイオレンスなどが原因で離婚するケースももちろんありますが、経済的な困難さが離婚につながるケースが多いというのはいくつかの調査などでも見て取れます。そういった生活環境が落ち着かない中で、子どもたちの勉強に向かう姿勢に影響を与えるのではないかと考えられます。

――子どもたちの貧困対策として、09年8月の衆議院議員総選挙では民主党が子ども手当をマニフェストに掲げました。そして民主党が下野し、児童手当という名称に変わったわけですが、一向に相対的貧困率は減少しません。対策としてはどんな方法がありますか?

山野:子どもの相対的貧困率を減少させることを考えると、現金給付は非常に大きいと思います。民主党政権自体は、うまく行きませんでしたが「チルドレンファースト」(未来を担う子どもたちに「投資」すると同時に、子どもたちの人権を「守る」という2つの観点から政策を進めること)を掲げ、子ども手当を支給したことには意味があったと思います。貧困率を低く抑えることが出来ているほとんどの国では現金給付が充分に行われているんです。

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