2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2015年1月16日

 ただ、それに対し、自民党を中心にバラマキではないかと批判したわけですね。これはマスコミ受けも良く、多くの人たちもバラマキ政策だと思うようになってしまった。今では民主党ですらまともに児童手当の拡充を掲げることはできないのではないでしょうか。結果として、所得制限をせざるを得なくなりましたが、その額は1000万円弱と高く、ほとんど意味が無い所得制限だと思います。なぜなら、そんなに所得がある子育て世帯はそんなにないわけですし、所得制限で浮いた額より事務経費の方が高いかもしれませんから。結局、子どもたちを政争の具に使っただけなのではないでしょうか。

――他にはどんな方法がありますか?

山野:親の稼働所得を増やすか、給付付き税額控除という方法も考えられます。

 まず、親の所得を増やす方法は、間接的な方法ですし、アベノミクスが仮にうまく行き、低所得世帯の所得も増えれば貧困率はもちろん下がりますが、今のままでは豊かな人たちが豊かになるだけです。また、80年代のバブルの頃は、中間層近辺には恩恵がありましたが、貧困ライン以下の世帯にはほとんど恩恵がなかったのだと思います。

――給付付き税額控除とは?

山野:負の所得税と言わるもののひとつで、簡単に言えば、子どもを育てていれば、所得税額を一定額を減額(控除)するのですが、税額が0円になるような低所得家庭の場合、逆に控除額相当が給付されるというもので、現在、アメリカやイギリスなどで行われています。確かに、アメリカの貧困率は高いですし、現金給付も少ないのは事実です。しかし、給付付き税額控除を計算に入れれば、日本と同じくらいなのではないかと指摘する研究者もいます。これについては日本でも、マイナンバー制(16年1月に運用が始まる予定の全国民に番号を割り当て、社会保障や税の管理などに利用される仕組み)が導入されれば、実行しやすいと思います。また、現金給付がバラマキだからと批判する人にも、給付付き税額控除なら納得してもらえるかもしれません。

 ただ、今お話した方法は、相対的貧困率を減少させるという面で見た場合で、貧困の世代間連鎖を断ち切るという意味で考えると、国も注目しているのは教育です。

――先ほど、日本の大学の学費は高いという話が出ました。確かに、ヨーロッパなどでは学費が無償という国もありますね。

山野:ヨーロッパの場合、ほとんど私立大学はないので、どんなに高くても年間で1500ドル程度です。現金給付をバラマキだからと批判するならば、学費を安くするという現物給付という方法もあると思うのですが、残念ながら日本では両方とも低いわけですね。


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