この時、正純とひかりは正式な夫婦ではなく、ひかりの希望によって契約によって6年間も暮らしていたことがわかる。
「どうしてだよ。こどもも欲しいし」ととりすがる正純。
ひかりは同意しない。身の回りの簡単な服装をキャリーバッグに詰めて、家をでてしまう。
「○○」が明らかにならない不可思議な感覚
正純役の東山がまっすぐにひかりにぶつかるような演技をみせる。ひかり役の柴咲は、感情のゆらめきを表面にあらわさずに、自分の考えを変えない。東山の演技をかわすようにみえて、受け止めている。
「○○」がいっこうに明らかにならない不可思議な感覚に襲われているのは、正純である。観客はそんな彼に感情を移入して、あらためてひかりの仕草と行動をじっとみつめることになる。
家出をしたひかりは、カプセルホテルに泊まる。その間に正純は、ひかりなしの生活がまったくなりたたないことを痛感させられるのだった。
まず、その夜の番組に着る洋服やシャツ、ネクタイのコーディネートがひかりまかせだった。ひかりが家出した直後に、正純の家族たちが自宅のタワーマンションに暮らし始める。
父の作太郎(平泉成)が脳梗塞で倒れ、母の仁美(岩本多代)が主婦替わりとなるが、朝の味噌汁の熱さに正純は驚く。ひかりは適温を知っていたのである。
声がしわがれる。ひかりは加湿器を入れておいたので、のどが守られていたことを知る。
夫の浮気騒動で、姉の川西美登利(渡辺真起子)と娘が転がり込む。その下の姉の久保田実結(奥貫薫)も。マルチ商法などにかかわってきたが、今度ミュージカルを目指すという。
多彩な演技派の俳優を縦横に配して、正純の困惑ぶりに微苦笑させられる。