2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月2日

 これらはいずれも必要なことだが、どれも実現しそうにない。必要とされる指導力が無ければ、反日暴動、海上での事故、地域的危機が起こったとしても驚くに値しない。憎悪の感情が長く続き過ぎた、と述べています。

出典:Michael Auslin,‘East Asia’s Struggle With the Past’(Wall Street Journal, December 30, 2014)
http://www.wsj.com/articles/michael-auslin-east-asias-struggle-with-the-past-1419960217

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 オースリンは、米国のアジア政策では日米同盟を含む日米関係を重視するよう説いている論者であり、その意味で親日的といってよいでしょう。この論説も日本への善意で書かれたものであろうと思います。しかし、この論説には、いくつかの異論があり、日本としては、提言を素直に受け入れることはできません。

 第1に、安倍総理が最大限の謝罪をすべきであるという点ですが、日本は既に村山談話をはじめ何度も謝罪しています。一般的に言って、謝罪をすることと、謝罪を受け入れ赦すことを比較すると、後者の方がはるかに困難です。受け入れられない謝罪はあまり意味がありません。アジアにおける歴史問題の難しさは中韓が謝罪を受け入れないことにあり、日本が謝罪しないことにあるのではありません。中韓が受け入れない理由については、政治的事情、文化的事情など諸説がありますが、安倍総理が謝罪すれば事が済むという問題ではないことは確かです。謝罪を受け入れる気がない者に謝罪をしてもさらなる要求を惹起するだけであり、問題は解決しません。慰安婦問題についての河野談話に関連して、「強制性をハルモニの名誉のために認めてほしい。以後追加の問題提起はしない」という条件で、無理をして韓国の要請に応じた結果、かえって問題がややこしくなった経緯もあります。このオースリンの提言は、アジアの歴史問題への誤解に基づいているように思います。

 第2に、習近平、朴槿恵がオースリンの言うようなことをする可能性は終戦70周年の年には、ますます期待できません。そういうことをすれば、両国のナショナリストを刺激し、自らの政権に打撃を与えかねません。したがって、オースリンの主張は、根拠なき希望の表明に過ぎないと言ってよいでしょう。

 第3に、論説は、歴史問題と地域的危機の勃発を、強く関連付けすぎているようです。歴史問題をうまく処理しないと、小さな漁船の衝突が制御不可能なものになるというのは、いささか論理が飛躍しています。竹島、尖閣での衝突があるとすれば、それは別の要因で起こることでしょう。


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