行列は“好意の象徴”
筆者も、どちらかといえばミーハーな部類に入る。「新しい」ということは十分に価値があるもののように感じられるし、「人よりも先に体験してみたい」と思うこともしばしばだ。もし「ブルーボトルコーヒー」の行列が自分に関心のあるものだったとしたら、きっとこの状況を冷静に見ることはできず、朝から多くの人と行列をつくる当事者の一人として、この「お祭り」に参加していたことだろう。
しかし、ファンが列を形成する一方で、ネットにはこうした行列を冷ややかな目で見る人も少なくない。確かに1杯のコーヒーのために2時間近く並ぶのを異常と思う人がいてもおかしくないし、テレビ中継やネットにアップされた写真や動画を見て、その光景に違和感を覚える人がいるのも無理はないことだ。
だが次のツイートを見て思うところがあった。
島根だったか長野だったかにスタバができた時にすっごい行列ができた時に、都会の人たち爆笑してたよね。今同じことが時を超えてブルーボトルコーヒーで起きてるけどどうよ。
https://twitter.com/deltamouth/status/564634450059726850
2013年4月に島根県に初めてスターバックスができたときも、開店初日の売上が全国店舗の最高額を記録するほどの行列ができたことで、大きな話題を生んだ。歓迎ムードのなか作られた行列を見て、「ブルーボトルコーヒー」と同様に冷ややかな笑いを送った人もいたことだろう。
しかし、このツイートにもあるように、島根県のスターバックスで行列をつくることも、東京の「ブルーボトルコーヒー」で行列をつくることも、俯瞰した立場で見ればそれは同じ「行列」にすぎず、それらに優劣はないものなのかもしれない。
「希少性」と「話題性」で生まれてくる日本の行列文化は、「地域差」や「嗜好性の違い」はあれど、みんな同じような期待を胸に行列に並んでいる。「コーヒー」で並ぶ人も「アニメキャラクター」で並ぶ人も、嗜好が異なるだけで「行列に並んでもいいから欲しい」という欲求や、「その製品やサービスを歓迎したい」という前向きな気持ちに変わりはないのだ。
ネタにされがちな“行列文化”。「たとえ誰かに笑われても」という想いで、今日も開店を心待ちにしている人たちがいる。
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