2024年12月19日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月16日

 以上の政策は、忍耐強く進めなければならない。米国の目標は、これまでの数十年間と同様、平和と繁栄と安定を米国のみならず、世界中の提携国にもたらすことである、と述べています。

出典:John F. Kerry,‘Alliances for Peace’(Project Syndicate, January 14, 2015)
http://www.project-syndicate.org/commentary/american-alliances-international-cooperation-by-john-f--kerry-2015-01

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 この論説の要点は、米国民の一部に見られる内向き志向を戒め、世界への関与を継続するべきことを説くとともに、世界に対してはテロ、環境等のグローバルな諸課題について既存の同盟体制に加え、関係諸国との提携関係ネットワークを形成することで対処するべきことを説くことにあります。しかし、米国内と世界へ向けた語り口が混在している上、現下の世界の混乱を受けてケリー長官の論理も拡散しがちであり、強烈なメッセージ性には欠けます。

 論説は、中国の拡張主義、中東和平等への具体的な対処については、何も触れていません。戦後70周年にも言及していません。クリントン長官時代の「アジア重視」は、もはや、その片鱗すら見られません。

 この論説からは、一種の浮遊感を受けます。最近の米外交で使用される様々な決まり文句が、はめ込み細工のようにちりばめられているのですが、それらは滔々たる哲学体系、戦略を成すわけでもありません。

 しかし、言葉の端々から米外交の方向、重点を確認することはできます。つまり、現在の米外交が、貧困撲滅、気候変動対策、核不拡散、イスラム過激主義との戦い、自由貿易の維持・発展、といった諸点に重点を置いていることを示唆しています。他方、大国間のパワーポリティクスのような、大戦略に関する事柄には関心が希薄です。

 論説が示唆する、現在の米外交の重点課題については、日本としても協力可能であり、そうすべき分野です。TPPを成功させることは、自由貿易の維持・発展に貢献します。安倍政権がISIS対策の一環として打ち出している人道支援は、継続・発展させる必要があります。

  
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