インターネットについては、米英など西側が、ビジネスや市民団体の意見も踏まえ管理されるべきであると言っているのに対し、中国は国が規制すべきであると主張しています。中国は国の秩序維持を最優先し、秩序を乱すと判断するインターネット上の意見表明は取り締まるという立場です。中国としてはそれは当然であり、西側から見れば、それはインターネットの言論・表現の自由の抑圧ですから認められない、ということになります。
昨年6月23日付の人民日報は、インターネットの国際的ガバナンスに関する特集を掲載し、「インターネット主権」の考えを明確に打ち出しています。この概念は、「各国は、領域内を通過するインターネットの情報につき最高決定権を持つべきである」との考えであり、インターネットの検閲・制限を正当化し得るものです。昨年11月に中国の烏鎮で開かれた世界インターネット会議では、中国は宣言草案に「インターネット主権」を盛り込もうとしましたが、西側代表団が異を唱え実現しませんでした。この西側代表団の対応は、当然のことです。中国がサイバー空間のガバナンスに関する国際的規範形成を主導しようとしていることに対しては、西側は厳しく対応していく必要があります。
問題は、インターネットがテロに使われる場合です。西側といえども、テロ防止対策の観点からは、インターネットに一定の規制をかけざるを得ません。しかし、安全保障上の要請とインターネット上の言論の自由と権利をいかにバランスさせるかは難しい問題です。
テロ対策上、インターネットに一定の規制をかけるとなると、西側の立場と中国の立場は一定の共通の基盤に立つことになります。しかし規制はやむを得ず、最小限にとどめようとする西側と、テロを極端に拡大解釈し、社会秩序の混乱の要因まで含め、できるだけインターネットを規制しようとする中国の立場は、根本的に異なります。論説が指摘するような、中国主導による国際規範の策定は、実現するようには思えません。しかし、戦略的に重要な問題について、国際規範を単に受け入れる側から作り出す側に回ろうとする中国の努力は、今後とも続くことになるでしょう。
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