2022年6月27日(月)

都会に根を張る一店舗主義

2015年5月8日

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島村菜津 (しまむら・なつ)

ノンフィクション作家

東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。卒業後イタリアへ留学。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(2000年、新潮文庫)が日本のスローフード運動の先駆けとなる。近著に『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化』(17年、誠文堂新光社)。
 

フェア・トレードを教わったエクアドルのエコツアー

 『カフェスロー』のことを知ったのは、10年ほど前、とある雑誌で、文化人類学者で環境運動家の辻信一さんと対談したのがきっかけだった。その年、『ナマケモノ倶楽部』の発起人の一人である辻信一さんが、数カ月後に計画していたエクアドルのエコツアーに参加した。ちなみに『ナマケモノ倶楽部』というのは、ナマケモノを守ろう、を超えて、その森と共生し、低エネルギーなナマケモノになってやろう、そんな地球に優しい暮らしを拡げようという市民団体である。その柱の一つ、フェアトレードというものが、わかったようでわからない。ならば、現場を覗いてやろうと言うわけだ。

その昔、辻信一さんのエクアドルのエコツアーに参加。カルロス・ソリージャさんのエコホテルからのエメラルド・フォレストの眺め

 そこで目にしたものは、マングローブの植林、エコ海老の養殖池、無数のハチドリや寄生植物が生息する楽園、エメラルドフォレスト……。そして、その美しい森で暮らし続けるために現金収入を得ようと、日蔭栽培の有機コーヒーを作り始めた人々や、これを援助する各国NPOの人々にも出会った。この時、目から鱗だったのが、近年、コーヒー業界では、インスタントコーヒーの大企業が広告費を大幅に増やす傾向にある一方、原価が緩やかに減少しているというコーヒー生産者の組合員の話だった。これでは生産者の暮らしが逼迫し、息子らが出稼ぎに行き一家離散したり、学校に通えない女の子が増える、というわけで世界中に産地とつながるフェア・トレードの動きが広がった、という。

 旅の後、このエクアドルのコーヒー生産者、600余名の暮らしを支える輸入会社『ウィンド・ファーム』の中村隆市さんにも会いに行った。すると、わが実家から車で20分、福岡県遠賀川沿いの田んぼの脇に立つ小さな店の奥で、コーヒーは焙煎されていた。地元では、チェルノブイリ支援も続ける社会的企業の先駆けとして知られていた中村さんによれば、フェア・トレードのコーヒーは、生産者や地域を守るだけではなく、多くの仲買いの手を渡って長い間、倉庫に保管されることがないだけに、酸化も少なく、風味がよいのそうだ。

 前置きが長くなったが、その贅沢なコーヒーが、いつでも、ふらりと出かけて味わえるのが、国分寺駅南口から歩いて5分の『カフェスロー』だった。

ランチの時間は地元の女性たちで賑わうカフェスロー。特に土・日のランチは混むので注意

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