2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月12日

出典:‘Where all Silk Roads lead’(Economist, April 11-16, 2015)
http://www.economist.com/news/china/21648039-through-fog-hazy-slogans-contours-chinas-vision-asia-emerge-where-all-silk-roads

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 「一帯一路」構想には2つの側面があります。一つは経済的メリットで、港湾、交通網、商業施設などを建設する計画は、エコノミストの言うように中国の企業が恩恵に浴するのみならず、地域の沿岸諸国にとってメリットのあるものであり、その点では彼らが構想自体に反対する理由はありません。中国はAIIBを使って投資を行うようです。AIIBは57カ国が創設メンバーに決まっています。

 すでに「一帯一路」は実現に向かって歩み始めたと言ってよいですが、ただ、計画が中国に一方的に有利にならないよう、AIIBの運用などをチェックしていく必要があります。

 もうひとつの側面は中国の意図です。「一帯一路」構想の狙いが、アジア太平洋・インド洋地域における中国の影響力の増大を狙ったものであることは疑いありません。エコノミストは中国が地域の要になるというのが習近平の描くアジアの将来像であると言っています。その通りでしょう。この点については日本をはじめとするアジア諸国は米国と緊密に提携のうえ、中国の意図をけん制し、阻止するための協力を推進する必要があります。その中心となるのはインドとインドネシアであろう。インドは当然のことながら、歴史的にインド洋を自国の影響下に置きたいと思っています。インドネシアはウィドド大統領が新しい海洋ドクトリンを発表し、インド洋への関心を強めています。インドネシアはASEANの盟主でもあります。日米両国は、この2国との連携を強め、インド洋で戦略的優位を確立しようとする中国の動きをけん制すべきでしょう。その他のASEAN諸国、豪州、さらには中近東の沿岸諸国との協力も必要です。

 中国の言う「海のシルクロード」が、中国が戦略的優位を確立する場所ではなく、沿岸諸国の共通の財であることを、中国に知らしめることが肝要です。

  


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