対談

2015年5月28日

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小川:10年前まではそうですよね。2001年に、マクドナルドの戦略を批判した僕の記事を学生に読ませたら「先生、マクドナルドは永遠ですよ」って言われた(笑)。意見が一致した学生は2人しかいなかった。原田泳幸さんが日本マクドナルドのCEOに就任(2004年)してからも、マック批判には大学院生までが「先生は何を言っているのかな?」って顔をしていました。その後、2010~11年は業績もすごかったですしね。

 でも僕のデータでは、2000年にはすでにおかしくなっていた。JCSI(日本版顧客満足度指数)で見ても、CS(顧客満足)が落ち始めていた。でもメディアはみなマクドナルドを褒めそやしていました。原田さんの大本営発表をそのまま垂れ流すだけで、批判していたのは『週刊東洋経済』だけです。メディアがしっかりと批判していれば、不幸にならなかったフランチャイズもいたかも知れない。はっきり言ってメディアも当事者で、「あんたたちの責任は大きいよ。責任あるよ」と記者に直接言ったこともあります。

消耗戦に勝者はいない

久松:一方で、マクドナルドだってビジネスは真剣にやっていたわけじゃないですか。先生がどこかで「価格弾力性のある顧客はせいぜい3割くらいしかいない」とおっしゃっていましたけど、そういったことだってデータでわかるわけですよね?

小川:はっきり出ていましたね。

久松:それでも見誤ってしまうのですか? つまり基本的なマーケティング手法をとったのならば、値下げが顧客満足に繋がっていないことがわかるはずなのに、実際にはダンピングみたいなことをしてしまったわけですよね。

小川:故・藤田田さんの時代は、理論通りにやったはずですね。ハンバーガーを一個80円でスタートしたのが1971年で、そしてオイルショックの時に約2.5倍の210円まで上がります。それでも買ってくれた人がいたので、オイルショック後もその値段で売り続けていた。でもバブルが弾けた途端に、そういうお客さんの何割かが来なくなってしまった。そうすると、当時の主流のマーケティング理論だったペネトレーション・プライシング(市場浸透価格設定:利益がほとんど出ない水準、あるいは原価割れを起こす水準にまで販売価格を下げることで競合に追随を断念させ、市場を専有する手法)をやってみようとなってしまうわけです。円高により同じコストで3倍も輸入できるようになっていたから、ペネトレーションの条件も揃っていたんですね。

 そうなると、全国津々浦々までたくさん店を作っていけば、値段を安くしても長期的にはプラスになるはずだと考える。バリュープライスで市場を抑える戦略そのものは間違えていないんです。ただ安くしすぎた。競合を駆逐するために、極度に安くしてしまった。

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