対談

2015年5月28日

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久松:ファストフードは「マックジョブ」と蔑称で呼ばれるような非熟練労働の象徴だったのに、それさえ無尽蔵に労働力がいるわけではない。

小川:絶対にない。それが前提です。為替も永遠に1ドル80円なんてありえないのだから、変動に備えておく必要がある。だから120円になったとたんに、アルバイトをスタバに取られてしまう。チェーンストアであっても労働の質が違うんですよ。

 僕は世紀の変わり目あたりで「対策を考えるべき」って警鐘を鳴らしていたのだけど、誰も見向きもしなかった。媒体にもこの問題を書かせてほしいとアプローチしたけど、書かせてはくれなかった。BSE問題があったから食の安全については関心が高かったけど、その基底にも材料や労働の調達の問題がある。そこを解決しなければいけなかったんですよ。学生も含めてね。

久松:先生のゼミですら、ですよね。

小川:僕の言っていることは2人しか聞かなかった。「いやあ先生、マックおいしいし、いいじゃないですか。安いし」って(笑)。

 2001年あたりまで、マクドナルドでクルーとして働いている学生は、勉強でも仕事でもレベルが高い子でした。店はものすごく忙しかったはずだけど、そういう人たちがいたから回していくことができた。でも今は、みんなスターバックスに行ってしまう。ちょっと前だとオリエンタルランド、つまりディズニーランドですよね。でも今はオリエンタルランドも人集めに苦労しています。あれだけ業績が良いのに、いつも募集をかけている。非日常の夢がブランドとしてあるとはいえ、さすがにもうちょっと時給を上げればいいんじゃないですかねえ。

久松:良いスタッフが集まらなくなる現象というのは、発展途上の国よりも成熟期に起こりやすいわけですよね。

小川:成長期は人口も増えるから、お客さんも従業員も若い人ばかりですよね。今、インドネシアとかベトナムで店に入ると、ほとんどが10代か20代。上海もそうだし、来年にはディズニーランドもできる。でも成長曲線が鈍化すると、人が集まらなくなる。

久松:なるほどね。成長期はお互いに「まあ、いいじゃない」で許しあえる関係にもなりやすいし。今の日本のサービス業とお客さんとの関係はそうじゃないですもんね。

小川:来年はもっと豊かになる雰囲気があるから、多少のことは我慢するんですよ。

久松:その意味では、日本の農業は成熟社会にいまだに適応できていない。「この先どんどん大きくなるからいいんだ」という空気から抜け出せていない。でも、どの業界もそうなんですね。

小川:同じですよ。特定産業の話じゃないと思います。

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